法人税増税、〝現実論〟の岸田首相と〝お花畑〟の立憲・枝野氏
衆院選をめぐり先日、日本記者クラブで9党首が揃って参加した党首討論が開かれた。討論会では、法人税増税をめぐり岸田首相が「慎重な姿勢」を示したが、これがメディアやインターネット上で批判されている。しかし岸田氏は、一国の首相として、また今後の経済成長を推進するため、当然の姿勢を示しただけ。法人税増税さえすればよいという立憲民主党の枝野代表は現実を見ないでお花畑にいるようなものだ。
討論会では、分配政策などの財源について枝野氏が「大企業の法人税の強化」などを明示した。これに対して、岸田氏が「経済全体の活力もしっかり考え合わせた上で具体的な有様を考えて行く」などと述べたことについて、批判されているのだ。
確かに、立憲民主党は選挙公約で、「個人の年収1000万円程度まで実質免除となる時限的な所得税減税」と「低所得者への年額12万円の現金給付」「税率5%への時限的な消費税減税」を掲げている。
その一方で、「法人税は、必要な政策減税は残した上で、所得税と同様、累進税率を導入する」としている。本来は、検討している法人税増税による増収分と、所得税減税、消費税減税などによる必要な財源分などを示すことが求められるのだが、そこは措くとする。
さて、日本の法人実効税率は現在、29.74%で国際的にみると決して低くない。先進国では日本を上回る税率となっているのは29.93%のドイツだけだ。もちろん、かつては40%を超えた時代もあり、年々下がっているのが実状だ。では、なぜ年々下がっているのか。
法人税の税率は、国の税収を確保するために所得税などの他の税とのバランスを図りながら決めるが、ここで重要なことは日本企業の国際競争力という点も考慮しなければならないということだ。そして、企業は他国に本社を移転させることもできるという点も重要な視点だ。
先ごろ経済協力開発機構(OECD)が新たな国際課税ルールに関し、法人税の最低税率を15%以上とする案に合意したが、それも巨大IT企業などが節税のために本社を税率の安い国に移転することを防ぐための措置だ。
企業はその気になれば、本社を海外に移転することはそれほど難しくない。税負担が大きく、国際競争力が低下すると考えれば、日本企業でも海外に移転してしまう可能性は常にあるのだ。
もし、トヨタ自動車が本社を海外移転したらどうなるのか、ソニーやパナソニックが海外移転したらどうなるのか、法人税制を考える際には、そうした可能性についても常に検討しなければならない。
立憲民主党が果たして、そこまで検討して法人税増税を打ち出したのか否かは知らないが、日本の経済成長を実現するという責務が政府にはあるのだ。だからこそ慎重に検討することが重要だし、簡単に「法人税増税する」などと述べない首相の姿勢こそ正しいのだ。枝野氏のように、法人税さえ増税すれば、なんでも解決すると考えたりしたら、日本の経済社会は破壊され、そのツケは国民が払わなければならなくなる。
(terracePRESS編集部)