国民の意思受け速やかな改憲論議を
憲法改正論議が加速しそうだ。衆院選を経て、憲法改正の必要性を認めるいわゆる「改憲勢力」は自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党などを加えて352議席となり衆院の4分の3を占めた。こうした状況は国民が作り出したことは間違いなく、だからこそ速やかな改憲論議と具体的な改憲プロセスに入ることが重要だ。
今回の選挙を受けた大きな変化は、維新の躍進だ。これにより国民民主と維新が、憲法審査会などで憲法改正論議を促進することで連携するという。国民民主の玉木代表は7日の民放番組で「衆参両院の憲法審査会は毎週開いたらいい。議論するために歳費をもらっている。開かない選択肢はない」と述べたことに、吉村氏も「個々の政策や、法案などを実現するために協力していくのが非常に重要だ」と強調。野党の中の〝改憲共闘〟もできそうだ。
憲法改正と言えば「慎重に議論を進める」「丁寧に進める」といった言葉が付きものだ。野党だけでなく与党からもそうした声が聞こえる。性急な議論をすることなく、社会状況を見極めながら、漸進的に進めるということだろう。
しかし、憲法は11月3日で公布から75年を迎えたのだ。この75年間、憲法についての議論がされ続けていたが、その間に日本と日本社会、日本人の生活などを取り巻く環境は大きく変わった。この変化に、憲法は解釈が変更されたりしたが、条文は「1字」も変わっていない。
日本はこの間、阪神淡路大地震災東日本大震災のような危機が発生した。もちろん、新型コロナウイルス感染症は日本にとって未曾有の事態だった。新型コロナでは、私権の制限と憲法の関係が議論されたことも記憶に新しい。
岸田政権は、自衛隊の根拠規定の明記や緊急事態条項の創設など4項目の党改憲案について、2024年9月末までの岸田首相の自民党総裁任期中の実現を目指す考えだ。もちろん、今後の国会での議論で自民党の4項目がそのまま改正案になるかどうかは不明だが、少なくともこの4項目を前提に、議論を進めることが現実的だ。
これまでは、立憲民主党や共産党などが憲法改正の入り口となる国民投票法の改正をめぐって議論することすら拒否していたため、改正議論自体が停滞したが、その改正国民投票法は、2021年6月11日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立している。この改正案すら与党などが提出してから成立まで約3年かかっている。
しかし、改正国民投票法が成立していることで、改憲に向けた投票環境は整っている。後は、改憲に積極的な各党がいかに前向きに議論を進めるかだろう。
もちろん、憲法に関わることである限り、改憲反対派の野党への〝一定の配慮〟は必要かもしれないが、反対派への配慮は戦後何十年も続けているのだ。まさに今の時代にマッチした、日本の社会に即した憲法が必要なのだ。そこに参加しない政党は、政党としての責務を放棄するに等しい。
(terracePRESS編集部)