地方から始まる「新しい資本主義」
岸田首相が提唱する「新しい資本主義」が動き出した。首相が議長を務める「新しい資本主義実現会議」は先ごろ、「成長と分配の好循環」の達成に向けた緊急提言をまとめ、分厚い中間層の復活へ向け、賃上げした企業への税制優遇の拡充など所得再分配の強化を打ち出した。
岸田首相が提唱する「新しい資本主義」というと「成長と分配の好循環」が基本にあり、その起爆剤として、デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーン分野の成長などに向けたイノベーション力の強化が注目されている。また、過疎化や高齢化といった地方の課題にデジタルを実装することで解決する「デジタル田園都市国家構想」や「経済安全保障」なども関心を集めている。
緊急提言でも、成長戦略として「科学技術立国の推進」「企業のイノベーション支援」「デジタル田園都市国家構想」「経済安全保障」を4本柱に据えている。
その上で分配戦略について「男女間の賃金格差の解消」「労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業に対する税制支援の強化」「非正規雇用労働者等への分配強化」などを盛り込み、例えば「来春の労使交渉では、新しい資本主義の考え方に基づいて、労働分配率の向上に向けて、事業環境に応じた賃上げが行われるよう、政府、民間企業、労働団体がそれぞれの役割を果たしていくことが必要」などと、具体的に実施する方向も明示している。
さらに、正規雇用と非正規雇用の問題では「同一労働同一賃金を徹底し、非正規雇用労働者の待遇改善を推進」とし、最低賃金については「感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1,000円とすることを目指す」としている。
何か、「新しい資本主義」というと、イノベーション力の強化で成長を果たし、その果実を分配するというようなイメージがあり、大企業や大都市圏を中心とした社会づくりのようなイメージを受けるかもしれないが、決してそうではない。
緊急提言では「新しい資本主義は、地方からスタートする。過疎化や高齢化といった地方の課題にデジタルを実装することで解決する『デジタル田園都市国家構想』を起動する」と指摘し、「地方の課題を解決するため、地方からデジタルの実装を進める」と強調している。
その上で「『デジタル田園都市国家構想』の具体化に向け、デジタルを活用した地域の自主的な取組を応援するための交付金を大規模に展開する。(中略)テレワークを更に推進するため、サテライトオフィスの整備や運営、そこに進出する企業による地域活性化に向けた事業の支援などの地方自治体の取組を支援する」などとしている。
岸田首相も8日の会議で「テレワーク、ドローン宅配、自動配送など、デジタルの地方からの実装を推進する。自動配送サービスを早期に実現するための関連法案を次期通常国会に提出する」と述べている。地方を中心に新しい社会を作ることが、日本全体の変革につながる。
(terracePRESS編集部)