こども、若者支援に財源確保が不可欠
政府の「こども政策の推進に係る有識者会議」は先ごろ、子ども政策に「思い切った財源投入」と「十分な人員体制」を求める報告書をまとめた。政府はこれを受けて、子ども政策を一元的に担当する「こども庁」を2023年度のできる限り早い時期に創設する方針で、来年の通常国会に関連法案を提出する。
子どもや若者への支援では現在、消費税の引き上げにより確保した財源などを投入しており、家族関係支出の対GDP比は、2013 年度の1.13%から2019年度には 1.73%まで上昇している。しかし、こうした取り組みが行われているにも関わらず、出生数の減少は予測を上回る速度で進行しており、人口減少に歯止めはかかっていない。
報告書では、こうした少子高齢化の進行などについて「社会に大きな影響を及ぼし、我が国の社会全体の根幹を揺るがしかねないと考えられる。今、まさに『有事』とも言うべき危機的な状況が静かに進行している」と危機感を示している。
その上で ①結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会を目指す②全てのこどもに、健やかで安全・安心に成長できる環境を提供する③成育環境にかかわらず、誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障する-の3つの柱を基に、具体的な施策を提言している。
例えば「若い世代の結婚や妊娠への不安や障壁の解消」に向けては、若者の就労支援や正社員転換など待遇改善を進めることで経済的基盤の安定を図ったり、地方自治体による総合的な結婚支援の取り組みに対する支援をしたり、結婚を希望する人を支え、子育て世帯を優しく包み込む社会的機運を醸成したりする必要性を指摘。
また、「地域子育て支援」では、身近な場所に親子が気軽に集まって相談や交流を行う地域子育て支援拠点を充実させたり、一時預かりやショートステイのサービス量の拡充を図ったり、子育て当事者がさまざまな子育て支援を適切に選択し、円滑に利用できるような情報提供をしたりする方策などを提起している。
「女性と男性がともにキャリアアップと子育てを両立できる環境整備」では、男性の家事・子育てへの参画の促進や男性の育児休業の取得促進、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現、勤務間インターバル制度やリモートなどを求めている。
これらは報告書に盛り込まれた施策のほんの一部でしかないが、さまざまな施策を展開するには財源が不可欠となる。
確かに、家族関係社会支出の対GDP比は徐々に増加してきているが、欧米諸国と比べて依然として低水準となっているのも事実。また、教育に対する公財政支出の対GDP比がOECD平均よりも低いという指摘もある。
こうした点も踏まえて報告書では、こども政策を実現するため「政府を挙げて、国民各層の理解を得ながら、更に安定的な財源を確保し、思い切った財源投入を行うとともに、十分な人員体制を確保することが必要不可欠」と強調している。2023年の「こども庁」の発足とともに、財源を確保することが子ども政策のカギを握ることになる。
(terracePRESS編集部)