オミクロン株、急拡大想定の共有が必要
新型コロナウイルス感染症のオミクロン株の感染拡大が急速に進んでいる中で、岸田首相は11日、対策の方向性を改めて公表した。医療体制の強化や経口薬が存在していることで、第5波とは態勢が異なっていることを示した。感染者数は今後も拡大することが予測されており、その状況認識を国民が共有し、それぞれが対策することが不可欠だ。
岸田首相は会見で「重症者や中等症の患者、あるいはそのリスクの高い方々に的確に医療を提供することを主眼に置き、これまで第6波に備えて準備してきた医療体制をしっかりと確認し、強化していく」と指摘。
その上で「感染の急拡大が確認された地域では、在宅療養が増加することが予想される。しかしオミクロン株による重症化率が低い可能性が高いことに加え、昨年の夏と状況が大きく異なるのは、在宅療養の即応体制を強化したことと、飲める治療薬の存在。メルク社の経口薬は、1万5000の医療機関、薬局が登録し、その約半数に2万人分を届けている。作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に購入に関する最終合意をし、2月中できるだけ早く実用化を目指している」と述べた。
また、計画で定めている即応病床数の確保が順調に進んでおり、在宅・宿泊療養に対する地域の医療機関数は全国で1.6万に達し、計画を3割上回る状況となっている。
足元の感染拡大はクリスマス前後の状況が反映されたものと考えられ、今後、年末、年始の帰省や忘年会、新年会、先ごろの3連休や成人式に関連した集まりなどによる感染の急拡大が予測されている。また、1月、2月に寒い日が続き、屋内での活動が増えれば、さらに拡大要因となる。
確かに、首相が述べたようにオミクロン株は重症化率が低い可能性がある。しかし、今後、感染者数が急増すれば、自宅・宿泊療養者や入院治療が必要となる人も増え、軽症・中等症の医療体制がひっ迫する可能性もある。重症化リスクの高い人に感染が拡がれば、重症者や死亡者が発生する割合が高まる。
とはいえ、オミクロン株であっても国民が行う基本的な感染対策はこれまでと変わらない。ワクチン接種した人も含めてマスクをしたり、手指を洗ったり、換気を心がけたりすることなどが求められる。密集、密閉、密接の3密を避けることも当然だが、オミクロン株は感染しやすいため、一つの密であってもできるだけ避けた方がよいとされている。
岸田首相は会見で「企業・自治体は、前広にテレワークの拡大など、業務継続計画(BCP)の準備」をするよう要請もしている。
感染力が強い一方、重症化率は低い可能性があるが、感染者数が急増すれば医療体制が逼迫する恐れがあるのがオミクロン株だ。ただ、政府は医療体制の強化など対策も行っている。そうした状況を広く国民が共有することが不可欠だ。
(terracePRESS編集部)