転換期迎えた時代認識を求めた首相
新型コロナウイルス感染症対策やウクライナ情勢など、日本は内外の大きな課題に直面している。その日本の進路を決めていくのが政府であり、官僚機構だ。岸田首相は先ごろ行われた国家公務員合同初任研修での訓示で、新たな国家公務員に大きな転換期を迎えた時代認識を持つよう求めた。新人への訓示ではあるが、首相の時代観、現状認識や取り組みの方向性がよく分かる。
訓示で岸田首相は「これまでの当たり前や、常識が通じない時代。皆さんは、そんな時代に、社会人としてのキャリアをスタートさせる。何よりも、そうした時代認識を持たなければならない。仕事は、そうした先が見えない時代において、必死に挑戦を続けながら、新しい時代を切り拓いていくことだ」などと指摘。
そのうえで、新型コロナとウクライナ情勢について言及している。
新型コロナについては「数年前には、多くの皆さんが、こんな状況が訪れると想像もしなかったのではないかと思う。我々政府は、立ちすくむことなく、新型コロナによって浮き彫りになった、様々な課題に立ち向かっていかなければならない。次の全く新しい感染症の危機に対し、社会全体として、どのように備えていくのか。新型コロナで傷ついた経済をどのように回復させるのか。人と人とのつながりが失われたことで、孤独や孤立に苦しむ人たちにどのように寄り添うのか。遅れが顕在化した、日本社会全体のデジタル化をどのように進めていくのか。いずれも、前例の踏襲によって、簡単に解決できるような課題ではないが、国民のために、しっかりと答えを見いだしていかなければならない」と述べている。
また、ウクライナ情勢については「力による一方的な現状変更の試みは、欧州のみならず、アジアを含む国際社会の秩序を根底から揺るがそうとするものだ。こうした事態に直面し、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有するパートナーとの結束を大切にしながら、どのように、ポスト冷戦期のさらにその次の時代の国際秩序を作り上げるのか。我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、現実を直視しながら、国民の生命と財産を守るためにはどうすれば良いのか。こうした問題も、我々が、正面から取り組まなければならない極めて重要なものだが、これまでの延長線上に、答えを見いだしていくことはできない」と指摘した。
もちろん、首相はイノベーション・科学技術の推進、地球温暖化問題への対応、デジタル田園都市国家構想の推進に加え、農林水産業や観光業、中小企業などの強化、災害への備えなどの必要性も指摘し、それらを行うことが使命であることを強調している。
首相はこうしたさまざまな課題に対応するための前提として、「前例を新しく作る」ことや「縦割りでなく横串」の必要性、「国民目線・現場目線」の実施などを呼びかけた。
その上で「共に困難を乗り越え、世界に誇れる日本の未来を切り拓いていこうではないか」と呼びかけている。
この訓示の核心は、時代が大きな転換期を迎えたという時代認識だ。確かに、首相が述べたように新型コロナ、ウクライナ情勢をみても、時代が動いていることは確実だ。これまで通りの社会がこれからも続くという保証はどこにもない。しかし、首相や政府がそれを認識したとしても、国民が認識しなければ社会は変わらない。国民こそが、時代の変革に対応しなければならない。
(terracePRESS編集部)