所得格差縮めたアベノミクス
「ジニ係数」と言えば、0~1の間で1に近いほど格差が大きいことを示す指標として知られるが、厚生労働省が先ごろ公表した世帯ごとの所得格差に関する2017年調査によると、税金の支払いや公的年金などの社会保障給付を含まない「当初所得」、その当初所得から税金や社会保険料を差し引き、社会保障給付を加えた「再分配後の所得」のいずれのジニ係数も低下した。
アベノミクスによる景気好転で所得が増えたり、雇用者が増えたりしたことが、格差が縮小に転じた大きな理由だ。
「当初所得」のジニ係数は0.5594で、前回から0.0110ポイント下がった。改善はなんと1981年調査以来、36年ぶりとなった。
世帯ごとの当初所得の平均額を見ると、全体では9.3%増の年429万2000円。65歳以上の高齢者世帯は5.4%増の100万4000円、母子世帯は23.2%増の236万7000円だった。
一方、「再分配後の所得」のジニ係数も前回より低下し、0.3721となった。これを当初所得のジニ係数0.5594と比べると、格差は33.5%改善したことになる。つまり、社会保障や税の再分配に一定の効果があったと考えられるわけだ。
「再配分後の所得」の0.3721をみると、日本は先進国の中では格差が特に大きな国ではないし、格差の小さな国でもないということになるが、特に日本の場合は、少子高齢化が急速に進展しているという点を考える必要があるだろう。
高齢化が進めば所得格差は拡大するものだが、それでも今回のように格差が縮小しているのは、経済政策が順調にいっている証でもあるだろう。
もちろん、再分配は高齢者らの生活を支えるものだが、その分、現役世帯の負担増につながりかねないことも事実だ。一方で、現役世代の負担増を抑制すれば、格差が今後、拡大に転じる恐れもある。
だからこそ、高齢者や女性らを含め、誰もが働きやすい環境を整備したり、働く人たち一人ひとりの待遇改善を進めたりする取り組みも必要となる。高齢者の労働参加といった取り組みは安倍政権では喫緊の課題として進められており、それも今後の格差の拡大抑制や縮小に役立つことは間違いない。
(TerracePRESS編集部)