予備費活用しながら機動的に実施する物価対策
政府は先ごろ、「物価・賃金・生活総合対策本部」を開催し、食料品価格の上昇抑制など予備費を活用した物価対策を機動的に実施していくことを決めた。日本はこれまでの物価対策で先進国の中でも物価上昇が押さえられているが、政府はさらに国民生活の安定を図る方針だ。
現在のエネルギーや各資源の価格上昇は、ロシアのウクライナ侵略を契機としている。しかし、その中で米国の利上げなどで日米の金利差が拡大。それによる円安が進行していることで日本の輸入材の価格が跳ね上がり、日本に物価高騰をもたらせている。
そうした物価高騰が家計を直撃し、日本人の生活は困窮を極めている。日本のメディア報道をみると、そんな情景が浮かんでくる。
もちろん物価が上がっていることは間違いないが、世界的に見れば日本の物価高騰は穏やかに推移しているのが実態だ。
G20諸国の5、6月の消費者物価上昇率(総合)をみると、日本は17位。先進国の中央値が8.2%、新興国が7.0%だが、日本は2.5%増にとどまっている。
日本は、これまで実施してきたガソリンなどの補助金といった激変緩和措置や電気代の燃料費調整制度、小麦の国内価格上昇を抑制する政策などで欧米に比べて低い伸びであることは間違いない。
また、物価対策として、メディアなどではほとんど報じられていないが、各地方自治体では1兆円の地方創生臨時交付金を活用したさまざまな支援策なども進んでいる。
例えば、兵庫県では「原油価格・物価高騰対策一時支援金の支給」として、国の「事業復活支援金」受給者らを対象に、中小法人等に20万円または30万円、個人事業主に10万円または15万円の一時金支給を実施しているし、北海道では「農業分野における原油価格・物価高騰等緊急対策事業」として価格高騰の影響を受けている燃油、飼料、肥料の営農経費に対する支援も実施している。
和歌山県でも「価格が高騰する配合飼料の支援金」として畜産農家に対し、飼料価格上昇分の2分の1を支援している。
こうしたさまざまな支援策を多くの自治体が実施し、価格高騰への抑制だけでなく物価上昇の影響を大きく受ける生活困窮者支援なども行っている。
政府は今後、エネルギー料金や食料品の価格上昇抑制策を強化するが、その際に活用するのが5.5兆円の予備費だ。
立憲民主党など野党は政府の予備費に一貫して反対し、批判しているが、新型コロナウイルス感染症対策でも、物価対策でも機動的に行うために活用できるのが予備費だ。こうした機動的な対応で日本の物価は他の国々より抑制できている。
物価の先行きはまだ見通せないが、もしさらに急騰する事態になったらさらに予備費の活用もするべきだろう。
(terracePRESS編集部)