「新しい資本主義」実現する23年度予算編成
政府は先ごろ、2023年度の予算案の編成に向けて、各省庁が予算を要求する際の概算要求基準を閣議了解した。成長と分配を両立させる「新しい資本主義」を実現するための各種政策や防衛力の増強、脱炭素化などさまざまな政策課題が求められる中で、23年度予算は今後の日本社会構築にとって重要な予算となりそうだ。
概算要求基準では、要求総額に上限を設定しておらず、設定しないのは10年連続となる。また、概算要求時に内容などが決定していない事項については、金額を示さずに要求し、予算編成過程で追加要求する「事項要求」も認めており、防衛費や原油・物価高対策など幅広い分野で金額を示さない要求が行われる可能性がある。
概算要求基準では、裁量的経費を2022年度当初予算より10%削減。この削減分の3倍を「重要政策推進枠」(特別枠)とする。また、義務的経費の一定程度も同枠に振り返る。
「重要政策推進枠」は、「新しい資本主義」の実現に向け、人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、GXへの投資やDXへの投資などの予算の重点化を進めるほか、エネルギーや食料を含めた「経済安全保障」も含まれる。この特別枠は少なくとも4兆4000億円程度になる見込みだ。
年金・医療などの経費は、2022年度当初予算に比べて自然増として 5,600 億円を加算した額の範囲で要求することが認められている。
岸田首相は7月29日に開かれた経済財政諮問会議で「10年間で150兆円超の官民連携によるGX投資、5年10倍増を目標とするスタートアップへの投資などを実行に移し、民間企業投資の喚起により、成長力を高める。同時に、人への投資を通じて、今後の成長分野への円滑な労働移動、持続的な所得の向上などを促す。こうした施策に重点的に取り組み、日本経済の成長力を強化していくことで、コロナ禍前の水準を超えて、着実な経済成長を実現する」と説明している。
岸田首相が掲げる「新しい資本主義」は持続的に成長し、その果実を国民に分配し、安心して暮らせる社会を構築することを目指している。まさに23年度予算が日本社会の未来を決めることになる。
メディアは「バラマキも近年常態化しており、財政の膨張傾向に歯止めがかかるかどうかは極めて不透明だ」などと批判しているが、来年度予算が日本にとって重要な予算となることを忘れてはいけない。
防衛費にしても、年末までに新たな国家安全保障戦略を策定するとともに、防衛力を5年以内に抜本的に強化するため、相当な増額が必要となっている。これにしても、将来にわたって日本の安全保障を確保するための措置だ。
来年度の予算編成にあたっては財政バランスばかり重視すると、日本の将来に大きな禍根を残すことになる。
(terracePRESS編集部)