林外相が米国で訴えた3つのポイント
林外相が先ごろ米国ワシントンを訪問し、戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し、ロシアのウクライナ侵略など国際社会や、緊張が高まっているアジアについての現状認識などを示し、日米の同盟強化の必要性に加え3つのポイントを示した。
林外相は講演で、国際情勢について「ロシアによるウクライナ侵略は、自由で開かれた国際秩序を根底から揺るがし、冷戦後、我々が享受してきた平和と繁栄を崩壊させる暴挙であり、我々に重大な問を投げかけている。『法の支配』に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜けるのか。あるいは、強者が弱者を圧倒し、『力の論理』に基づく現状変更が横行する国際社会のジャングル化を許してしまうのか。我々はまさにこの瀬戸際にいる」と危機感を強調した。
その上で、インド太平洋地域について「この地域でも、『法の支配』より『力の論理』の方が一層顕著になってきており、地域の戦略バランスは日米に厳しいものになりつつある。言うまでもなく、東シナ海や南シナ海では力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続しており、国際社会、特に日本を含む東アジア諸国の懸念が増している」と述べ、台湾海峡の平和と安定の重要性を含めたこの地域の秩序維持の必要性を指摘した。
林外相がこうした認識を示した前提にあるのはもちろん、アジア太平洋地域の中国による覇権主義的な活動だ。軍事的な活動に加え、不透明な開発支援や経済的威圧をテコにして国益を達成しようという秩序の破壊も見受けられている。
こうした状況の中で、林外相はインド太平洋地域で日米が取り組むべき課題として①戦略バランスの回復②経済秩序形成と経済安全保障③日米同盟を支える重層的な人的交流の促進-の3点を指摘、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序の構築を他の国と連携しながら、日米が主導していくとの決意を述べている。
「戦略バランスの回復」について林外相は「安全保障面でのバランスが堅持されることにより、外交はより一層効果的に機能する。その観点から、日米同盟の抑止力と対処力の強化が急務だ」と指摘。日本が「反撃能力」も含めて防衛力を5年以内に抜本的に強化することを説明する一方で、「米軍によるプレゼンスと対日防衛義務に対する揺るぎないコミットメントが一層重要になってくる」と米側に要請した。
また、経済安保については「米国はインド太平洋地域の経済的統合のリーダーであるべき」などとして米国のTPP復帰を要請しながら、日米の連携を深める必要性を強調した。その上で「重要技術の窃取、知的所有権の強制移転、経済力を背景とする威圧的な国益追求などの新たな挑戦が顕在化している。そうした挑戦に対する脆弱性をかかえることは、外交上の自由度を損ない、戦略的な課題に対する国際社会の連帯を弱めるおそれがある」として、経済安全保障でも日米の連携の必要性を訴えた。
ウクライナ情勢やアジアの状況などを俯瞰すれば、平和や秩序、自由が挑戦を受けていることは間違いない。その挑戦に対抗するには日米の連携強化が不可欠だ。
日本国民も、自由社会を維持し、ルールに基づいた国際社会を構築することが日本の責務であるとの認識をさらに深める必要がある。
(terracePRESS編集部)