岸田政権が加速させるスタートアップ育成
岸田政権は先ごろ、看板政策の「新しい資本主義」の展開に向け、新しい資本主義実現会議に付属する「スタートアップ育成分科会」の初会合を開き、スタートアップ育成に向けた動きを加速させた。スタートアップは日本が立ち遅れている分野で、加速させることが日本経済の道を切り拓くことにつながる。
岸田首相は会合で「スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵。私自身、全国各地で、多くのスタートアップの創業者の方々と意見交換を行ってきたが、いずれもこの国の未来を切り開いていくにふさわしい大変頼もしい方々ばかりだった」などと述べ、スタートアップ育成の必要性を改めて指摘した。
しかし、日本のスタートアップは他の先進国に比べて立ち遅れているのが現実だ。主要先進国の企業の開業率をみると、フランスが12.1% (2019年)、英国が11.9%(2020年)、米国が9.2%、ドイツが9.1%(いずれも2019年)となっているのに対し、日本は2020年で5.1%にとどまっている。
その一方で廃業率はドイツの12.5%(2019年)、英国の10.5%(2020年)などに比べると、日本は2020年で3.3%となっており、米国や欧州主要国と比べ低い水準で推移している。つまり日本の場合は企業の〝新陳代謝〟が活発ではないのが実状だ。
また、起業を望ましい職業選択と考える人の割合(2019年)は、中国では79%、米国では68%であるのに対し、日本は25%で、先進国・主要国の中で最も低い水準にあるという。
もちろん、日本でスタートアップ企業が低迷しているのは理由がある。それは人材や資金、事業面など多方面に及んでいる。
例えば、人材面で言えば、日本型雇用システムなどがネックとなっており、大企業からスタートアップへの人材流動が進んでいない。また資金で言えば、創業融資時の個人保証が起業促進上の課題となっている。
さらに、スタートアップに対する事業化支援や施設提供、起業家教育を実施している大学の割合は依然として少なく、これも改善の余地が大きい課題だ。
スタートアップの育成のためには、こうした数々の隘路を改善して前に進めなければならないが、それに挑戦して育成を進めようというのが岸田政権の戦略で、人材や資金供給、税制などのさまざまな支援に向けた環境整備を図る考えだ。
スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵となっていることは間違いない。政府は本年末に5年で10倍増を視野にした5か年計画を策定する方針だ。
また、1人で起業するフリーランスが安定的に働ける環境づくりのため今国会に取引適正化法案を提出する方針で、すでに取り組みはスタートしている。総合経済対策にも人材・ネットワークの構築や資金供給の強化、大企業を含めたオープンイノベーションの推進などについて盛り込まれる見込みだ。
スタートアップ育成は、メディアからすれば〝地味〟な政策課題だが、官民が一体となってスタートップ育成を進める機運を盛り上げることも必要だ。
(terracePRESS編集部)