インバウンド需要喚起し地域再生を
新型コロナウイルス感染症対策としての水際対策の緩和で、外国人入国者が急増している。円安が進んでいるため、外国人観光客にとって日本の魅力がさらに拡大しており、インバウンド需要を盛り上げることで、円安を活用した経済活性化が期待できる。これに伴い、観光地や宿泊施設の一層の付加価値化なども加速させることが必要だ。
出入国在留管理庁によると、2022年上半期(1~6月)の外国人入国者数は62万1112人で、前年同期に比べ47万9945人増加し、3.4倍となった。新規入国者数は38万8893人で、前年同期に比べ33万3789人の増加だった。
在留資格別の新規入国者数は、「留学」が最も多く、全体の27.0%を占め、次いで「技能実習1号ロ」が9万7937人、「短期滞在」が8万8556人。国籍・地域別の新規入国者数の上位は、ベトナム、中国、ネパールの順だった。
観光などの短期滞在はまだ約9万人にとどまっているが、政府は11日から新型コロナウイルスの水際対策について、入国者数の上限を撤廃し、個人の外国人旅行客の入国を解禁するなど大幅に緩和している。これによって入国制限は、ほぼコロナ禍前の状態に戻ったことになる。
このため、今後は外国人観光客が急激に増加することが期待される。現在円安が進んでいる。ドルの独歩高の様相を呈しているが、米ドルではなくても、自国通貨が円に対して高い水準であるならば、日本を訪れるメリットは大きい。
もちろん、コロナ禍前の2019年の訪日外国人旅行者数は累計で3188万2000人だったから、まだそれに比べると格段に少ない状況だが、当面は可能な限り3000万人台に近づけることが必要だ。
野村総合研究所によると、2019年海外観光客による効果、いわゆるインバウンド需要が4.8兆円、留学生など長期滞在者の経済効果が2.7兆円、合計で7.5兆円の経済効果が生じていたと試算される。これは年間の名目GDPを1.3%押し上げたことになり、経済効果としてはかなり大きいといえる。
政府はコロナ禍以前にインバウンドについて2030年6000万人という目標を掲げた。もちろん、それは新型コロナで大きな影響を受けたわけだが、自然や食、伝統文化、芸術、風俗習慣、歴史など日本各地の観光資源の魅力が失われたものではない。だからこそこの目標達成に向けて、政府・民間が一体となって国内観光地の魅力作りに取り組むべきだろう。政府は「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」などで、地域の観光拠点の再生や、魅力や収益力を高める事業を支援しており、さらなる付加価値化も求められる。
その一方で、コロナ禍前の日本の代表的観光地では、急激な外国人観光客の増加でトラブルなども相次いだことを考えれば、外国人観光客と地域との〝共存〟を図れるような新たな取り組みも不可欠となる。
(terracePRESS編集部)