習総書記が武力統一を言及した台湾問題への認識を
中国共産党の習近平総書記は第20回党大会で、台湾統一方針を巡り、「決して武力行使の放棄を約束しない」と断言した。中国と台湾の問題は直接的には日本とは関係のない問題と捉えられがちだが、台湾の安全保障は日本の安全保障に直結する。そのことについて国民もあらためて認識すべきだろう。
習氏は演説で「台湾問題は中国人自身のことであり、中国人が自分で決めなくてはいけない」「祖国の完全な統一は必ず実現しなくてはならず、また必ず実現できる」と訴えた。
その一方で「平和統一の見通しを得るために最大限の努力をする」とも述べており、即座に武力統一することについては明確に否定した。
しかし、武力による台湾統一が単なる政治スローガンではないことは、最近の中国の台湾に対する武力による威嚇をみれば明白だ。
中国が台湾を武力統一できる軍事力を備えていることは事実だ。侵攻の能力はあるのだから、あとは意思の問題だ。習氏が武力侵攻を決断すれば、いつでも可能となる。
台湾は日本と同じように民主主義や自由主義を基調とする国家だ。そして人権の尊重や法治主義は国際社会の普遍的価値であるべきだ。もし、それが武力で蹂躙されるようなことがあったら、民主主義国の日本としても決して無視できないことだ。
そればかりでなく、台湾海峡で紛争が発生すれば、日本経済は大きな打撃を受けることになる。
中国による武力侵攻が現実のものとなり、日本と台湾の間のシーレーンの安全性が確保できなくなると、貿易面では、輸入物資の輸送が困難となり、国内での資材の値上げに直結する。
日本は中東の石油に大きく依存しており、もし石油輸送に影響がでれば、ガソリン、石油価格が一気に高騰する恐れもある。それだけ、台湾の安全は日本社会の安定に影響するわけだ。
もちろん、台湾の武力統一という中国の冒険主義を日本だけで抑止することは不可能だ。米国やオーストリアなどと連携しなければならないし、英国やドイツ、フランスなど欧州諸国との協力も必要だ。
そうした国際社会との連携を深めるには、日本自らが努力することが不可欠で、防衛力の整備を一層進める必要がある。
もちろん、防衛力の強化とともに中国との関係強化も忘れてはならない。防衛力を強化する一方で、外交関係を深めることも重要だ。
しかしながら、最も重要なのは、台湾の安全を中国が武力によって脅かす可能性があり、それが現実のものとなったら、日本への影響が避けられないことを国民が認識することだ。
(terracePRESS編集部)