ホルムズ海峡封鎖に対応できない野党
イラン沖のホルムズ海峡近くで6月13日、日本の海運会社「国華産業」が運航するタンカーなど2隻が攻撃を受けた事件は、国内に大きな衝撃を与えた。改めて指摘するまでもないが、ホルムズ海峡はペルシア湾沿岸諸国で産出する石油の重要な搬出路で、毎日計1700万バレルの石油が通過しており、日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通っている。
核合意をめぐって米国とイランの緊張が増しており、安倍首相もイランを訪れ、最高指導者のハメネイ氏らと会談し緊張緩和を求めたのは、この地域の安定が日本の経済社会に不可欠だからだ。
日本の2019年度の原油輸入量は1億7704万キロリットルで、この9割を中東に依存している。そしてその大部分がホルムズ海峡を通らざるを得ないわけで、もしホルムズ海峡が機雷の敷設などで封鎖されるような事態になったら、日本経済が大きな影響を受けることは避けられない。石油の大半が輸入できなくなるわけだから、ホルムズ海峡が日本経済の首根っこを押さえているといっても過言ではない。誰も「そのような事態は起こらない」などと断言できないだろう。
もちろん、日本には石油の国家備蓄が約150日分あり、平均すればホルムズ海峡をすでに越えて日本に向かっているタンカーも20日分弱の石油を運んでいるから、突然、停電が起きたり、自動車のガソリンが買えなくなったりするわけではない。しかし、それが長期化すれば、やはり日本経済、もちろん国民一人一人の生活が、厳しい状況に追い込まれるのだ。
そのホルムズ海峡が封鎖されるとしたら、どのように封鎖されるかだが、一番考えやすいのは海峡に多くの機雷が敷設され、それによりタンカーが安全に航行できなくなる状況だろう。
では、そのような場合、日本はどう対応するべきなのか。
安保法制では、①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと③必要最小限度の実力行使にとどまるべきことーを新三要件とし、これを満たす場合「武力の行使」が認められる。
そして、この新三要件を満たす場合で、例外的に外国の領域において行う「武力の行使」は、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに個別具体的な活動は現時点では想定されていないという。
もちろん、実際に「新三要件」に当てはまるか否かは、その事態の状況や、国際的な状況等も考慮して判断していくことになり、今回の場合も、当然のことながら自衛隊の派遣が必要な状況ではないが、もし封鎖という事態が起こった場合、日本の石油の大動脈を復活させるために、海上自衛隊が海峡の機雷を回収できる法的スキームは整備されているのだ。
いずれにしても、今回の事件は、もしホルムズ海峡が封鎖されれば、日本経済に大きな打撃を与えるということを想起させるものとなった。
野党5党は参院選の選挙共闘を進めるため、それぞれ市民連合と政策協定を結んでいる。その協定には安保法制の廃止が謳われている。
もしホルムズ海峡が封鎖され、日本経済が立ちいかなくなった場合でも、「何も対応しなくてよい」というのが今の野党の姿勢なのだ。
(terracePRESS編集部)