野党の「休業補償が必要」はまやかし
新型コロナウイルス感染症対策をめぐって、立憲民主党や国民民主党などの野党が口をそろえて休業補償の必要性を指摘している。
立憲の枝野代表は4日に会見し「休業と補償はセットであるべき」などと説明。また同党の蓮舫氏もツイッターでたびたび休業補償の必要性を述べている。
野党が休業補償の必要性を何度も言うのだが、実はその中身についてはほとんど言及していない。零細・中小企業事業者は「休業補償」と聞けば、売り上げ減少分の補償と思うかもしれないが、野党はその定義も中身も言わずに、ただ「休業補償」「休業補償」というだけなのだ。
事実、野党が提出した補正予算の組み替え動議は、①中小・小規模事業者等の持続化給付金の倍増 ②中小・小規模事業者等の賃料の支払猶予 ③雇用調整助成金の助成率引き上げーなどとなっているだけで、「休業補償」と聞いて一般国民が思い浮かべるいわゆる企業の売り上げの補填は見当たらない。
また野党が5月1日に政府に提出した「新型コロナウイルス対策等に関する要望事項」も、雇用調整助成金や家賃支援、学生支援など盛り込まれているが、こちらも「休業補償」という名称はない。
つまり、野党は「休業補償の必要性」を主張することによって、さも政府の対策が決定的に不十分であるということを印象付けようとしているのだ。
西村経済再生担当大臣は以前、「休業補償として一定割合の損失補填を行っている国は、世界で見当たらない」としているが、これは事実で、例えば米国では連邦政府が「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法」や「家族第一・コロナウイルス対処法」「新型コロナウイルス対策補正予算法」などに基づいてさまざまな対策を行っているが、いずれも従業員の雇用確保のための支援や個人・世帯への支援で、企業向けとして行われているのは融資が中心だ。
また、独立行政法人経済産業研究所の藤上席研究員によれば「英国・フランス・ドイツの3カ国を例にとれば、いずれも休業補償を行っているのは従業員に対してである」という。これも米国と同様だ。
藤氏はさらに「英国の場合は政府が授業員の賃金の80%を肩代わりする。フランス政府は70%、ドイツ政府は60%である。(中略)日本における従業員に対する休業補償は、政府が従業員の賃金の90%を肩代わりすることとなっており、世界的に見ても最高水準である」としている。
これは政府が対策に盛り込んだ雇用調整助成金のことだが、これもすでに世界で最高水準になっている。
もし「休業補償」を個人、被雇用者についての「休業補償」ととらえるならば、日本は他の国々とそん色ない、またはそれ以上の補償をしているのだ。
もちろん、日本の場合は、零細・中小企業についても支援している。持続化給付金では個人事業主に最大100万円、中小企業に最大200万円を支給する。これとは別に協力金を整備している自治体もあることは言うまでもない。
また、中小企業者の資金繰り支援のため、民間金融機関でも実質無利子、無担保、据置期間が最大5年という融資制度もあるのだ。
しかし、これらは野党が印象付けようとしている「休業補償」ではないのだ。実は世界で行われている支援措置以上に日本は用意しているのだが、そんなことは頬かむりして、政府が手を抜いていることだけを訴えたいのだろう。
(terracePRESS編集部)