妥当な緊急事態宣言の延長措置

安倍首相は先ごろ、新型コロナウイルス感染症をめぐる特措法に基づく緊急事態宣言を5月末まで延長することを表明した。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、新規感染者数が着実に減少に転じつつあると判断しながら、①収束のスピードが期待されたほどではない ②再度感染が拡大すれば、医療提供体制へさらに負荷が生じる恐れがある-との理由から「当面、現在の緊急事態宣言下での枠組みを維持することが望ましいと考える」と提言、首相もそれに基づいて極めて妥当な判断を下したと言える。

 

そもそも、新型コロナウイルスは人類にとって未知なる脅威だ。5月5日現在の全世界での感染者は累計で約351万人という感染症で、未だ不明な部分があるウイルスなのだ。まだ全世界で約351万の症例しかない。治療薬やワクチンの開発が即時にできないのも未知なるウイルスだからこその話だ。全世界が手探りの中、それぞれの法体制、社会体制などに基づいて新型コロナの封じ込めを行っているわけで、さまざまな国で当初の想定通り効果が上がらないことがあったり、実効性が上がったケースもあったりするだろう。

そういう意味では、当然、今回の特措法に基づく緊急事態宣言による対策も、状況に応じた対策にならざるを得ない部分があるわけだ。

 

首相は、5月4日の記者会見の冒頭発言で「当初予定していた1か月で緊急事態宣言を終えることができなかったことについては、国民の皆様におわび申し上げたいと思う」と述べているが、延長をめぐって首相が謝罪するようなたぐいの話ではないだろう。

 

さらに、質疑応答の冒頭で幹事社のフジテレビの記者が「今回、宣言を延長し、国民が自粛継続など、更なる負担を強いられることについて、率直に政治の責任についてどのように考えるか」とも質問しているが、ほとんど無意味な質問でしかない。

そもそも、宣言の発出も、延長も特措法に基づいて対策本部の本部長である内閣総理大臣が行っているが、安倍首相個人の考えで発出したり、延長したりしているわけではない。専門家会議という専門家の判断に基づいて対策本部、政府で決定しているのだ。

 

首相はこの質問に対し「まず、当初予定をしていた緊急事態宣言について、1か月で終息する、終えるということを目指していたが、残念ながら1か月延長するに至ったこと、内閣総理大臣として責任を痛感している。それを実現できなかったことについて改めて、おわびを申し上げたいと思う」と述べているが、それを言わせたい記者の真意は一体どこにあるのだろう。

延長すれば、国民にさらなる負担を求める。しかし、仮に延長しなかったら、国民にさらなる感染拡大のリスクを負わせる可能性もある。

つまり、首相の責任を問うことを意図するなら、今回のように延長した場合はもちろん、延長しなかった場合でも「延長しないという判断をした責任」を問うことも可能なのだ。フジの記者はただ単に首相から謝罪の言葉が聞きたかったのだろうか。

 

日本の対策は欧米各国に比べて緩和的である一方、死亡者が格段に少ないなど極めて順調に推移していることを忘れてはならない。それは新型コロナウイルス感染症対策の日本モデルともいうべきものだ。

その日本モデルの追求で、この感染症を収束させようというのが延長の趣旨であり、延長することで政治の責任が問われることではない。

 

(terracePRESS編集部)