成功した菅首相の五輪外交
東京五輪は、各競技でのアスリートたちの〝戦い〟への真剣な取り組みが、日本を始め世界中の人々の心に響いていることだろう。政治の世界でも菅首相は、五輪開会式に出席した各国首脳との外交を展開した。中でもフランスのマクロン大統領との会談では大きな成果を挙げており、菅首相の五輪外交は成功したといえる。
菅首相は24日、五輪開会式に出席したコソボ、モンテネグロ、ポーランド、スイス、アルメニア、そしてフランスの各首脳と相次いで会談した。
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領との会談では、菅首相が、EUが策定するインド太平洋戦略を通じて、インド太平洋地域への欧州の関与が強化されることを期待することなどを述べたことに対し、ドゥダ大統領が「自由で開かれたインド太平洋」への全面的な支持を表明した。また菅首相は、日本産食品に対するEUによる輸入規制措置撤廃に向け、ポーランドの協力を求めた。
菅首相はギィ・パルムラン・スイス連邦大統領兼経済・教育・研究大臣にも、日本産食品に対する輸入規制措置撤廃に関し、欧州内での理解促進について協力を求めている。
フランスのマクロン大統領とは、日仏首脳会談に続いて1対1の昼食会も開催し、「共同声明」も発表している。「共同声明」では「包摂的かつ法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現の重要性を再確認した」と記し、5項目にわたる両国の取り組みなどを、明記している。
両国のインド太平洋地域へのコミットメントとして「海洋安全保障、気候変動・環境・生物多様性及び質の高いインフラといった優先分野において、インド太平洋の国々のための具体的なプロジェクトに基づき、積極的に協力を継続することで一致した。そのために、第 2 回日仏インド太平洋作業部会及び第 2 回日仏包括的海洋対話を可能な限り早期に開催することで一致した」と明記した。
安全保障については「両国は、2021 年 5月の日仏米豪共同訓練『ARC21』を始めとして、最近の仏軍による日本での数々の展開が示す、両国の安全保障・防衛関係の発展を歓迎した。両国は、防衛部隊間の関係強化を継続することにコミットした」としている。
またフランスのEU内での役割について「EU理事会における EU のインド太平洋地域での協力に関する戦略の採択を想起しつつ、EUが、民主主義、法の支配、人権及び国際法の推進に基づき、インド太平洋地域の安定、安全、繁栄及び持続可能な開発に貢献すべく、インド太平洋地域において戦略方針、プレゼンス及び行動を強化するために、フランスは、2022 年上半期の理事会議長国として尽力する意向を表明し、日本はフランスのこのイニシアティブを高く評価した」と記しており、首脳会談では両国がインド太平洋の安定にこれまで以上に協調して取り組む姿勢を明確にした。
(terracePRESS編集部)