誤解される経済対策
政府の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」をめぐって、「小さすぎる」「後手」といった批判が後を絶たない。しかし、これには本質をきちんと理解しないまま不正確な情報をそのまま流し続けるメディアの責任がある。
今回の経済対策は、感染拡大防止と医療体制の整備と雇用の維持と事業の継続を柱とする「緊急支援フェーズ」、経済活動の回復を図る「V字回復フェーズ」の二つのフェーズで構成されている。国民に一律10万円を支給する特別定額給付金も盛り込まれている。
全体の事業規模は117兆1000億円で、財政支出は48兆4000億円だ。事業規模のGDP比を各国と比較すると、日本が21%なのに対して、ドイツは22%、英国は19%、フランスは18%、米国14%となっている。ドイツはわずかに日本を上回るが、事業規模をGDP比でみれば、その他の国より日本の方が上回っており、日本の経済対策が世界的にみても最大級であることは間違いない。
しかし、ここで気を付けなければならないことがある。今回の経済対策には二つの側面があるということだ。その一つは「GDPの下支え・押し上げ効果」であり、もう一つは「雇用・事業を守る効果」だ。
経済対策を行うと必ず、どの程度GDPを押し上げるのかが問われるが、その短期的な効果を発揮するのが財政支出、いわゆる真水ということになる。
もちろん、「雇用・事業を守る効果」でも中期的にはGDPの押し上げに寄与することになるが、短期的にはあくまでも新型コロナで影響を受けた人や企業への支援策という側面が強い。
では、今回の対策はどの程度GDPを下支えするのか。真水といっても国の支出に限定するのか、地方分も含めるのかなど定義によって異なる部分もあるのだが、今回の対策のGDP押し上げ効果は3.3%程度と見込まれている。
また、2019年度予算でも総合経済対策を行っており、これを含めれば4.4%程度の押し上げ効果が見込まれている。
ただし、これで十分か否かは現時点では判断できないのが実情だ。それは2020年度第1四半期のGDP成長率にどの程度影響するかはまだ不明だからだ。だから、仮に4%程度の落ち込みであれば、今回の対策で対応できるが、10%落ち込んだら不足してしまうということになるわけだ。
メディアや識者などによる対策批判は、単に「GDPの下支え・押し上げ効果」が期待できないというものだが、GDPの落ち込みに対して、規模が十分か、不十分かはまだ分からないのが実状なのだ。万が一、今回の対策で不十分であることが判明すれば、機動的に対処すればよいのである。
メディアや識者などによる対策批判はGDPの数字しか見ない一面的なものなのだ。
だから、今回の対策が、企業などの事業の継続や雇用の維持を支えるセーフティネットを用意していることなどは正当に評価すらしていない。
対策では、日本政策金融公庫、民間金融機関による実質無利子・無担保・据置最大5年の融資もあるし、既往債務の実質無利子融資への借り換えの仕組みも盛り込んでいる。また、雇用調整助成金の拡充や特別定額給付金もある。
新型コロナ感染症対策で影響を受けた中小企業などにこそ、こうした融資制度が必要なはずだ。
民放テレビなど、毎日といっていいほど経済対策批判を続けているが、実は政府は的確な対策を行っているのだ。
(terracePRESS編集部)