求められる安倍政治の継承
安倍首相の後継を決める自民党の総裁選は、岸田政調会長、石破元幹事長、菅官房長官らの争いとなる様相だ。新型コロナウイルス感染症対策が急務となっている中で、政治空白を作らないために、党員・党友投票を回避することは賢明な判断だ。総裁選は、国会議員、都道府県代表の投票で決まるが、日本にとって安倍政治の継承が求められる中で、いずれの候補者が安倍政治の継承にふさわしいかが焦点になる。
安倍首相の後継にまず求められるのは新型コロナ対策だ。安倍政権の新型コロナ対策は、先進各国と比べて死亡者が格段に少ない上、世界最大級の経済対策を策定するなど極めて順調に推移した。最近は、感染症拡大の予防と経済活性化の両立に重点を置いているが、まずはこの継続が不可欠だ。
そして、7年8カ月に及ぶ安倍政権の最重要課題が成長の確保とデフレからの脱却だったことは誰もが認めるところだ。バブル経済の崩壊、リーマンショック、少子高齢化の進展、消費の多様化などさまざまな環境変化で、財政政策の効果がかつてとは異なる中で、金融政策と財政政策、成長戦略などを並行的に進めたアベノミクスなどの成果で、デフレ状態ではなくなったことは事実だし、長期にわたる経済成長を実現したことも確かだ。
デフレからの確実な脱却を目指すことは今後も不可欠だし、そのためには安倍政権と同様に金融政策と財政政策、成長戦略を重層的に実施していくことが求められる。
地方創生も安倍首相が力を入れたテーマだ。人口の急減、超高齢化という日本が直面する課題に対し、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生することを目指すもので、安心して働けるような地域、地方への新たな人の流れの創出、結婚、出産、子育てがしやすい地域などの実現を図る。地方の活性化と真正面から向き合った安倍政治は、後継首相が必ず踏襲しなければならない課題だ。
現在実施している「Go To トラベル」も地域経済の重要な産業である観光業を支えるための施策だし、農林水産業の高度化や輸出振興も安倍首相が力を入れた政策だ。
また、消費税を社会保障や幼児教育の無償化などの財源に充当させたが、社会保障も幼児教育も今後の日本社会にとっては不可欠であり、人生100年時代に向け高齢者から若者まで、全ての人が元気に安心して暮らせる社会を作るという安倍首相の考えは、そのまま継承することが求められる。
忘れてならないのが「地球儀を俯瞰する外交」と呼ばれるほど世界を飛び回った外交だ。安倍首相の外交方針によって日本はアジアのリーダーとして環太平洋パートナーシップ(TPP)を成立させるなど、国際社会の中で尊敬される地位を築いた。今後も安倍首相のような積極的な外交を展開することが不可欠だろう。
さらに安全保障もそうだ。中国の軍事力の膨張や、北朝鮮の核・ミサイル開発などアジアの緊張は増す一方で、国土や領海、国民の生命財産を守るため、抑止力としての防衛力の強化は今後も不可欠となる。
楽天の三木谷会長は「安倍総理 日本の社会経済の発展の為に頑張っていただいたと思います」とツイートしているが、まともな目で見れば、安倍政治が日本社会を発展させたのは事実だ。この安倍政治を継承するのによりふさわしい政治家が後継首相になるべきだろう。
(terracePRESS編集部)