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議論されない石油資源の重要性への対応

石油価格の高騰へ対処するため、政府は石油の国家備蓄を初めて放出する。米国、中国、インドなどとの異例な国際協調の取り組みとなる。石油価格の高騰は経済のさまざまな分野に影響を及ぼすことになり、今回の高騰は石油資源の重要性を再認識させることとなった。岸田政権は経済安全保障の取り組みを進めているが、シーレーンの安全確保の必要性があることも国民の共通認識にすべきだ。

 

今回の高騰は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだことで、世界的に経済活動が再開され、その結果として原油の需要が一気に膨らんだ一方、産油国の増産の取り組みが進んでいないことが原因だ。

 

日本の石油備蓄は国が所有する国家備蓄と、石油会社に法律で義務づけている民間備蓄などがあり、国家備蓄は全国10カ所の基地などで国内需要の約90日分以上を貯蔵、民間備蓄は70日分以上と定められている。

 

国家備蓄は9月末時点で145日分と目標を大きく上回っており、今回はこの備蓄のうちまずは余剰分を徐々に放出することになるのだろう。

 

日本は、米国、中国、インドに次ぐ第4位の石油消費国で、その99.7%を海外からの輸入に依存しており、輸入先では中東地域が80%以上を占めている。とは言っても、今回の高騰でも原油は通常通りに輸入されているし、産油国の事実上のカルテルにほころびが生じれば、再び価格の下落が始まる可能性も高い。

 

だから産油国への増産の要請や国家備蓄の放出、石油メーカーへの補助金の支給などにより、さらなる急激な価格高騰を抑制することはできるだろう。その点で言えば、岸田政権は積極的な取り組みをしている。

 

しかし、それだけで議論を終わらせるべきではないだろう。石油は日本経済の死命を制する重要な物資なだけに、輸入するための中東や南シナ海のシーレーンの安定が重要だ。今回の高騰では、世界的な急激な需要増が主要因になっているため、メディアなどであまり議論されていないが、安定的な輸入を確保するためには、こうした取り組みが不可欠なのだ。

 

自衛隊は現在、オマーン湾など中東地域に護衛艦などを派遣し、情報収集しているし、自由で開かれたインド太平洋を実現するために米、豪、インドなどと4カ国の協調体制(クアッド)を作り、さまざまな活動を実施している。

 

さらに、立憲民主党や共産党などが批判し続けている安保法制では、集団的自衛権の行使を一部認め、日本の存立を脅かす明白な危険がある(存立危機事態)などの条件付きで、集団的自衛権の行使を認めており、そこではタンカーのルートであるホルムズ海峡での機雷掃海などが想定されている。

 

中東地域や南シナ海で万が一、タンカーが安全に航行できない事態になったら、今回の価格高騰の比ではない〝石油危機〟が起こる。そうした事態を起こさないための取り組みが不可欠だ。

 

(terracePRESS編集部)

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