空疎な文言で政治を進める野党、市民連合の稚拙
最近の国政選挙は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」なる団体、いわゆる「市民連合」が結節点となり、各党が市民連合の政策文書に署名することで共闘関係を作ってきた。その市民連合が先ごろ「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書」なる文書を野党各党に提出した。文書は、提起した政策に合意し、共闘することを求めているが、実際は、具体性に乏しく空疎な文言が並んでいるだけ。具体性のない政策は政治ではなく、単なる人気取りでしかない。
要望書は「自民党政権に代わり、新しい社会構想を携えた野党による政権交代を求めていきたい」などとした上で「立憲主義の再構築」「民主主義の再生」「透明性のある公正な政府の確立」「利益追求・効率至上主義(新自由主義)の経済からの転換」「自己責任社会から責任ある政府のもとで支えあう社会への転換」「いのちを最優先する政策の実現」「週40時間働けば人間らしい生活ができる社会の実現」「東アジアの共生、平和、非核化」-など15項目の政策を並べている。
一つ一つの項目を見ればもっともらしく感じるかもしれないが、一つ一つの中身をみると、国民がどのように豊かな生活をしていくのかも皆目わからない。
例えば「利益追求・効率至上主義(新自由主義)の経済からの転換」では「新型コロナウイルスの危機は、医療、教育などの公共サービスを金もうけの道具にしてきた従来の改革の失敗を明らかにした。(中略)利益・効率至上主義を脱却し、国民の暮らしと安全を守る新しい政治を目指していく」と記し、「自己責任社会から責任ある政府のもとで支えあう社会への転換」では、「新しい社会をつくりあげるために、財政と社会保障制度の再分配機能を強化する。消費税負担の軽減を含めた、所得、資産、法人、消費の各分野における総合的な税制の公平化を実現し、社会保険料負担と合わせた低所得層への負担軽減、富裕層と大企業に対する負担の強化を図る。貧困対策においては、現金・現物の給付の強化と負担の軽減を組み合わせた実効的対策を展開し、格差のない社会をめざす」と述べている。
確かに、市民連合は、富裕層と大企業への負担を強化し、それを低所得者層の負担軽減に回すという発想だ。それ以上でも、それ以下でもない。経済を活性化してパイを増やしていくという発想はまったくない。「AからBに金を回せばよい」という稚拙とすらいえない提案なのだ。
「東アジアの共生、平和、非核化」では「日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた多国間対話を再開する」としているが、国連の制裁決議すら無視するのだろう。
立憲民主党の枝野代表はこの要望書について「方向性はあっており、あとはスピード感の問題だ」、共産党の小池書記局長は「重く受け止めている」などと評価し、次期衆院選での野党共闘を進める考えを示している。
こうした文書を基に共闘を進める野党では国民を豊かにできないことは間違いない。
(terracePRESS編集部)