コロナ収束後に待つ経済財政の分岐点
新型コロナウイルス感染症の拡大は緊急事態宣言の効果などで、一定程度の抑制に成功しつつある。宣言の延長によって感染はさらに収束するとみられている。今後の新型コロナの動向にもよるが、経済社会にとって今後重要になるのは経済状況だ。そうした中で政府は2030年までの中期的な経済財政の試算を策定している。
今回の試算では、2021年度の実質GDP成長率を4.0%程度、名目GDP成長率を 4.4%程度と見込んだ政府経済見通しのほか、2020年度第3次補正予算案、21年度当初予算案など、足下の経済財政の動向を反映させている。
その上で、政府が掲げるデフレ脱却・経済再生という目標に向けて、政策効果が過去の実績も踏まえたペースで発現する「成長実現ケース」と、経済が足元の潜在成長率並みで将来にわたって推移する「ベースラインケース」の二つを試算している。
「成長実現ケース」では、コロナによる経済の落ち込みからの反動や、ポストコロナに対応した新たな需要などによる着実な回復に加え、中長期的にも、デジタル化やグリーン社会の実現、人材投資、中小企業をはじめとする事業の再構築などを通じて生産性が着実に上昇することを想定。
その結果、GDPは実質2%程度、名目3%程度を上回る成長率を実現する。名目GDP600兆円の達成時期は「感染症の経済への影響を見極める必要がある」としながら、2023年度頃となることを見込んでいる。
一方「ベースラインケース」では、経済成長率は中長期的に実質1%程度、名目1%台前半程度となる見通し。また、消費者物価上昇率は、0.7%程度で推移するとしている。
財政面をみると、「成長実現ケース」で、政策的経費を、税収などで賄えているかどうかを示す指標である「プライマリーバランス(PB)」は、歳出改革を織り込まない自然体の姿で2025年度に対GDP比で1.1%程度の赤字となり、PB黒字化の時期は2029年度となるという。公債等残高対GDP比は、試算期間内で安定的な低下が見込まれるとしている。
これに対し、「ベースラインケース」では、PB赤字対GDP比は、2025年度に2.1%程度となり、試算期間内での改善は緩やかなものにとどまる見通し。また、公債等残高対GDP比も、試算期間内は概ね横ばいで推移することとなる。
以上から分かるように、日本の経済財政はコロナ収束後に分岐点を迎える。例えば、2030年度の「国・地方の公債残高の対GDP比」をみると、「成長実現ケース」が168.5%なのに対し、「ベースラインケース」では208.1%となる。
まさに、「成長実現」をできるか、「ベースライン」にとどまるのか、コロナが収束したとしても2021年、22年は重要な年になる。
(terracePRESS編集部)