必要な「インド太平洋を守る」という意識
ドイツ海軍のフリゲート艦が先ごろ、東京に寄港した。インド太平洋地域での国際秩序の維持を図る活動の一環だ。それだけ同地域の緊張が増しているということだ。日本政府は米国、オーストラリア、インドと4か国(クアッド)の協力体制を構築しているが、国民も同地域の国際秩序を維持することが、日本の安全保障を確保するという認識を深める必要がある。
東京国際クルーズターミナルに先ごろ寄港したのは、ドイツ海軍のフリゲート艦バイエルン。ドイツ政府は2020年9月、「ルールに基づく秩序」などの原則を掲げた「インド太平洋指針」を策定している。方針では、日本など価値を同じくする国との連携を打ち出している。
バイエルンは8月にドイツを出港し、ソマリア沖で海上自衛隊と共同訓練をし、オーストラリアやグアムなどに寄港。11月初旬には、日本南方の太平洋で海上自衛隊と再び共同訓練を実施している。
ドイツ海軍トップのカイアヒム・シェーンバッハ総監(海軍中将)は共同通信のインタビューで、インド太平洋地域で法に基づく国際秩序維持と平和に貢献するため「可能ならば同地域に2年に1度は艦船を派遣したい」と表明。「日本やオーストラリアなどと連携を強化したい」と強調している。
また、英国のウォレス国防相は7月に来日した際、インド太平洋地域に英軍の2隻の哨戒艦を「恒久的に展開」させ、数年後には「沿岸即応部隊」を展開させる方針を明らかにしている。
こうした英国やドイツの方針は、両国から遠く離れたインド太平洋地域の安定に向け貢献するという決意の表れだ。それだけ、インド太平洋地域の秩序が破壊されるという恐れが出ているということだ。
もちろん、各国はその秩序の〝破壊者〟の名指しは避けているが、同地域の秩序を脅かしているのは中国だ。南シナ海、東シナ海などで中国が覇権主義的な活動や軍事的な拡張をしているのは今さら指摘するまでもない。
問題は、日本国民がどこまでその脅威を感じているかということだ。平和を守るためには決意が必要だが、問われるのは日本国民がどこまで状況を認識しているかだ。立憲民主党や共産党などは、安全保障といえば「平和憲法を軸とした外交」などと主張するが、こうした英国やドイツの行動は理解できないだろう。しかし、そうした国々が協力せざるを得ない状況になっているのが現実なのだ。
岸田首相は10月8日の所信表明演説で「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟。米国をはじめ、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国・同志国と連携し、日米豪印も活用しながら、『自由で開かれたインド太平洋』を力強く推進する」と述べている。こうした首相の認識を国民が共有することが、日本の安全保障につながる。
(terracePRESS編集部)