物価対策より重要なのは「稼ぐ力」 自民党が掲げる「GDP1000兆円」「国民の所得5割増し」の意味とは

参院選では、自民党の1人当たり一律2万円の給付金や、立憲民主党の「食料品の消費税ゼロ」など、足元の物価高対策が大きな関心を集めている。家計への支援が必要なのはその通りだろうが、真に問われるべきことは、豊かで国民が安心して暮らせる国をどのように作るかだ。自民党が掲げる「GDP1000兆円の実現」は見過ごされがちだが、まさに重要な政策目標といえる。
政府の後押しもあって2025年の賃上げは5%前後となったが、現在の物価高は、国内外の供給制約や為替、エネルギー価格など構造的な要因が複雑に絡んでおり、一時的な対症療法では限界がある。
それよりも中長期的な視点で、日本経済そのものを〝強くする〟政策が問われているのだ。
自民党は参院選の公約で「GDP1000兆円」と「国民所得の5割増し」を掲げている。2040年度の名目国内総生産(GDP)を24年度の617兆円から1000兆円とすることと、平均所得を5割以上増加させるということだが、、それは単なる数字の問題ではなく、「国全体で稼ぐ力の回復」「投資と成長の好循環の構築」という国家戦略の核心を示すものだ。
そのため公約では「10年後の主力産業を明確化し、成長分野に大胆に投資」や、「全国に100ヶ所の企業城下町を展開し、地域に賑わいと活力を生み出す」ことなどを謳っている。
また、理系学部・大学院を強化し、AI・データサイエンス・エンジニア人材の育成に特化した投資を行うことで、世界における日本の競争力と成長力を高めるとともに、中小企業・小規模事業者に対しては、「経営者の負担感軽減と5年間
60兆円の生産性向上」に向けた官民の取り組みを実施する。
こうした自民党の経済政策に対して、立憲民主党は「食料品の消費税ゼロ」は掲げても、明確な経済政策は示していない。消費税ゼロは、消費者に一時的な恩恵があるかもしれないが、財源問題や制度の複雑化といった課題が残る上に、根本的な経済の底上げにはつながらない。
短期的な人気取りと言えば、その通りなのだが、これでは「政党」とすら言えない。政党にとって必要なのは日本経済の持続的な成長と自律性をどう確保するかという国家的視点だ。
物価高対策だけが参院選の争点ではない。今こそ、国民一人ひとりが「日本の未来をどう築くか」という視点で政党の経済政策を見極めるべき時である。