実質的な「外交的ボイコット」で日本の意思の表明を
来年2月4日から開催される北京冬季五輪に政府代表を派遣しない欧米各国の「外交的ボイコット」が注目を集めている。中国の人権侵害などに抗議することを目的としたものだが、岸田政権は現在、明確な態度を表明していない。しかし、欧米各国と日本とでは、中国との関係が異なり、各国と同様な姿勢を示す必要はない。重要なのは、実質的に日本の意思を示せるか否かだ。
外交的ボイコットをいち早く表明したのは米バイデン政権。12月6日にホワイトハウスの報道官が「新疆ウイグル自治区で継続中の大量虐殺、人道的な犯罪行為その他の人権侵害」を理由に、北京冬季オリンピック/パラリンピックに外交的または政府を代表する一切の派遣を行わないことを公表した。
他の同盟国について米政府は「判断については、他国が独自に行うよう当然任せる」との考えを示したが、その後、ニュージーランド、オーストラリア、英国、カナダなどが相次いで賛同している。
こうした動きについて日本は、岸田首相が16日の参院予算委員会で、「私自身は参加することは予定していない」と表明したが、政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」については方針を示していない。
このため、岸田政権が外交的ボイコットを表明するか否かが関心を集めているわけだが、ゼロか100かの選択だけでは外交はできない。日本の場合は中国が巨大な〝隣国〟として存在しており、他の国とは事情が異なる。米国が決めた方針にただ追従すればよいというわけではない。その一方で、日本として中国の人権侵害を容認しないというメッセージを届けなければならない。こうした状況の中で岸田政権は難しい決断を迫られているのだ。
日本共産党は先ごろ、志位委員長の「日本政府は、当然、政府代表を送るべきではない」などとする談話を公表しているが、遠吠え的に発言するだけなら簡単だ。
「外交的ボイコット」と言っても、実際のやり方は各国の事情に応じて異なるべきだ。例えば、ナンシー・ペロシ米国下院議長は5月の議会公聴会で「中国の大量虐殺に沈黙することは許されず、世界各国の国家元首は北京冬季五輪に出席すべきでない」などとして、国家元首級のボイコットの必要性をしている。
その後、各国で議論されるうちに「外交的ボイコット」が政府代表の派遣を拒否することと定義されたわけだ。
岸田政権が、政府代表が一切参加しない「外交的ボイコット」をするのか、しないのかは今のところ分からないが、首相自身は参加しないことを表明している。首相が参加しないだけでも、その理由を「中国の人権侵害、大量虐殺などを容認せず、抗議するため」と明確にすれば日本の意思を表明したことになる。その上で、外交官や政務官、副大臣レベルにとどめれば、日本の意思を中国に伝えることは可能だ。
重要なのは、日本の立場を明確にし、日本が決して中国の人権侵害、大量虐殺などを容認しないというメッセージを中国はもちろん、各国に伝えることだ。
(terracePRESS編集部)