岸田首相「基本的価値損なう行動にワンボイスで対応を」
岸田首相は先ごろ、オンライン形式で開かれた米国主催の民主主義のためのサミットに参加し、自由や民主主義、法の支配、人権侵害といった基本的価値を損なう行動に対し有志国がワンボイスで臨むよう呼びかけた。岸田政権は11月に国際人権問題担当の首相補佐官を設置したほか、外務省が海洋・台湾などを担当する企画官を新たに設置する方針などすでに取り組みをスタートさせている。
民主主義のためのサミットは米国のバイデン大統領が「腐敗との闘い」「権威主義からの防衛」「人権尊重の促進」をテーマに呼びかけたもの。世界から約110の国や地域の首脳などが参加したが、バイデン大統領が専制主義国家と位置づけるロシア、中国は招かれなかった。
サミットではバイデン大統領が冒頭「民主主義は世界中で憂慮すべき挑戦を受け続けている。専制主義者たちは世界中で影響力の拡大をもくろみ抑圧的な政策を正当化しようとしている」などと危機感を示した。
岸田首相は、首脳プレナリー・セッションにオンラインで参加。「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を損なう行動に対しては、有志国が一致してワンボイスで臨んでいかなければならない。深刻な人権状況については、これからもしっかりと声を上げていく」などと発言。
また、北朝鮮による拉致問題についても「日本の主権や国民の生命と安全に関わる重大な問題であるとともに、基本的人権の侵害という国際社会全体の問題でもある」などと指摘した。
さらに、健全な民主主義の発展のためには、その中核的な土台として、中間層が質・量両面で分厚くなっていくことが不可欠であることを指摘。
その上で「金融資本主義経済の急激な展開が、格差の拡大や国際社会の分断など多くの弊害を生み、世界の多くの国で、健全な民主主義に歪みをもたらしつつある。日本は、デジタルとグリーンをキーワードとする経済社会の歴史的変革の中で、成長も分配も実現する『新しい資本主義』の実現に取り組み、健全な民主主義の中核である中間層を守るとともに、気候変動などの地球規模の課題や『人』を大切にした未来に向けた投資に、力強く取り組んでいく」などと強調した。
いわゆる西側諸国は現在、人権侵害や南シナ海での軍事的拡張など中国の行動に警戒感を強めているほか民主主義が根付いていない国々の〝民主化〟も課題となっている。
このため日本はサミットで、インドネシアやコンゴの国家警察の能力強化や、ベトナム、インドネシア、ラオス、カンボジア、ネパール、バングラデシュなどの法令・司法制度の整備・運用など、各国へのさまざまな支援を表明している。
日本は、岸田首相が述べたように自由や民主主義といった基本的価値を損なう行動に対して、各国と協力しながら、主張すべきは毅然として主張し、責任ある行動を求めていかなければならない。
(terracePRESS編集部)