決して他人事ではない米国の橋崩落
米国で先ごろ、道路の橋梁が崩落する事故が発生し、計6台の車が巻き込まれ、数人が怪我をしたという。崩落した橋は建設から約50年経過したもので、バイデン大統領はインフラの再建に取り組むことを表明した。メディアはほとんど取り上げないが、日本でも老朽化した橋梁は多く、政府はすでに老朽化対策を進めている。
米国の事故は日本のメディアでも伝えられたが、その理由はバイデン大統領が橋の近くで経済政策について演説する予定で、バイデン氏は現場を訪れ、「全国に劣悪な状態の橋が4万5000もある。我々は今回崩落した橋を含む、全国の橋を再建する」と表明したためだ。
米国では昨年11月、橋や道路の修復などに5年間で1兆ドル(約115兆円)規模を投じるインフラ投資法が超党派の合意を得て成立している。
こうした米国の状況は決して他人事ではない。日本では約73万の橋があるが、2023年3月には約39%が建設後50年を経過する見通しで、2033年3月には約63%に達する。
もちろん、政府はそれを放置しているわけではない。安倍政権時代の2013年度の道路法改正などで2014年度から国、自治体など道路管理者は全ての橋梁、トンネル、道路附属物などについて5年に1度の点検が義務付けられている。2018年度に1巡目の点検が完了し、2019年度から2巡目の点検が行われている。
2014年度から18年度の1巡目の点検で「早期に措置を講ずべき状態」「緊急に措置を講ずべき状態」と診断された橋梁は全国で68,784あった。バイデン大統領は「劣悪な状態の橋が4万5000もある」と述べたが、驚くことにそれより日本の方が多いのだ。もちろん、バイデン氏が言った「劣悪な状態」がどのような状態を指すのか明示的ではないが、いずれにしても日本は修繕すべき橋が多々あるわけだ。
国交省の調査によると、68,784のうち国交省が管理している橋は3,411で、このうちすでに着手済みが2,845で83%。着手済みのうち完了しているのは1,439で42%となっている。
これに対し、自治体管理の橋は62,836となっており、着手済みが34,419で55%。うち完了しているのが21,912で、35%となっている。
社会資本の老朽化はこのような橋梁に限ったことではない。トンネルや河川管理施設、下水道、港湾岸壁などさまざまな施設がある。こうした施設の老朽化は着実に進むもので、決して放置できない問題だ。米国はこれから対策を進めるようだが、日本ではすでに対策を進めている。
新型コロナウイルス感染症では、野党などが政府に財政支出の拡大を求めたばかりだが、コロナ以外にもインフラ整備などの財政需要もある。だからこそ、さまざまな観点から予算を策定することが重要で、国民の歓心を買うために〝大盤振る舞い〟をすればよいというわけではない。それが責任ある政府与党であり、立憲民主党などはそうした点を理解していない。
(terracePRESS編集部)