求められる足もとの景気対策
政府は追加経済対策と第3次補正予算の編成に取り組んでいる。現在、新型コロナウイルスは感染の再拡大が急速に進み、「Go Toキャンペーン」の運用見直しや、飲食店などの営業時間の短縮、不要不急の外出を控えるよう要請した自治体も出ている。このため、経済が再び悪化する恐れもあり、足元の景気対策が重要になってくる。
2020年7-9月期の実質GDPは前期比年率21.4%増加となったが、GDPギャップは依然として相当程度存在しているとされている。このため政府は11月10日の閣議で追加経済対策、3次補正予算の編成を決定している。
追加経済対策では、もちろん雇用維持や景気の下支え対策が当初から想定されていたが、現在のように新型コロナが急拡大する前のことだけに、景気の下支えの重要性が増している状況だ。
11月27日の経済財政諮問会議で有識者議員グループが「経済対策のとりまとめと力強い経済の回復に向けて」と題したペーパーを提出している。ペーパーでは「7-9月期のGDPギャップが相当程度存在し、足元、内外で新型感染症が再拡大する中で、設備投資が2四半期連続で減少するなど企業の投資意欲の低下がみられることや、雇用回復の遅れに伴う家計の所得や消費への影響が懸念されている」と指摘している。
同時に提出された「参考資料」では、7-9月期時点のGDPギャップについて「足下で34兆円程度存在」としている。
また、7-9月期までに、特別定額給付金の押し上げ効果で家計の可処分所得が増加している一方で、家計最終消費支出は7-9月期に回復したものの、新型コロナ以前とはまだ大きな乖離があることなどから、「今後の個人消費の持ち直しは雇用者報酬の回復が鍵」と指摘しているが、新型コロナの再拡大がさらに進めば、雇用者報酬の回復に歯止めをかけることにもなりかねない。
以上のことから、足元の景気がさらに悪化する懸念を拭いきれない。事実、有識者グループのペーパーは、「GDPの7割を占める投資・消費を中心に需要不足が継続し、景気が再び悪化するリスクには注意が必要」と強調している。
しかし、同ペーパーは「デジタル化、カーボンニュートラル、イノベーション推進のための基金等を思い切った規模で創設」「ICT人材の確保など体制整備」「成長分野への円滑な人材移動を、スキルアップの強化を図りつつ支援」「デジタル化・グリーン化・イノベーション等への民間投資の拡大や企業再編、賃金引上げの喚起、住宅投資の促進」といったように、中長期的な経済対策がメインとなっており、足元の景気対策についてはほとんど言及されていない。もちろん、経済財政諮問会議の有識者議員としては、日本経済の成長戦略を検討するのが責務と考えれば、中長期の視点に立つのもやむを得ないのかもしれない。
しかし、年度末に向けて2021年度予算と切れ目のない景気対策を行い、その上で同時に成長戦略を実行していくというのであれば、まずは足元の景気対策が不可欠となる。
30兆円を超すという需給ギャップをどのような手段で埋めるのか、そのための手法が求められている。
(terracePRESS編集部)