賃上げなどで消費の活性化を
政府は先ごろ公表した2月の月例経済報告で、景気の全体判断を下方修正した。新型コロナウイルス感染症のオミクロン株の拡大で個人消費が低迷したのが影響した。2月も個人消費のほか、原材料価格の動向など下振れリスクがある。こうした状況の中で今後、春闘が行われるが、賃上げなどによる消費の活性化が不可欠となる。
2月の月例報告では基調判断を「景気は、持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が残る中で、一部に弱さがみられる」とした。1月までの判断である「新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、このところ持ち直しの動きがみられる」から、下方修正となった。基調判断の引き下げは昨年9月以来、5カ月ぶり。
先ごろ公表された 2021年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比1.3%と2四半期ぶりのプラスとなり、概ねコロナ前の水準まで回復していた。これは、個人消費、輸出、設備投資がいずれもプラスに寄与したもので、特に、個人消費は自動車などの耐久財や旅行・外食などのサービスが増加した。
しかし、2月の報告では個人消費について「持ち直しに足踏みがみられる。消費者マインドは、まん延防止等重点措置の実施等により、大幅に低下。感染拡大を受け、小売・娯楽施設の人流は、1月以降減少傾向。財消費は引き続き底堅い一方、サービス消費は総じて弱めの動き。外食は、年末年始は好調であったものの、感染拡大の影響から、1月後半は減少。また、旅行は、予約キャンセルが増加しているなどの声もあり、弱含み」と分析しており、個人消費の力強さが一転してなくなったことを示している。
雇用情勢については「弱い動きとなっているものの、求人等に持ち直しの動き。雇用者数および失業率は概ね横ばいで推移。日次有効求人件数は引き続き改善傾向。新規求人数は、水準は低いものの、持ち直しの動き。一方、高齢層を中心に、非労働力人口は増加」と、弱い動きの中で明るさも出ているとの見方を示している。
また2月の報告は景気の先行きについて「感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、感染拡大による影響や供給面での制約、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」と警戒感を示しており、こうした下振れリスクへの対応が求められている。
中でも、足元では原油高や物価高など国民生活への影響が徐々に出ており、これが個人消費の足を引っ張る可能性も否定できない。
これに対し、岸田首相は17日の記者会見で「原油を始めとする物価高については、我が国の経済、そして国民生活に大きな影響が出る大変重大な課題であると思っている。原油高騰については、従来から激変緩和措置を用意する、あるいは自治体におけるさまざまな支援に対して財政的な支援を行う、あるいは業界ごとのさまざまな支援策を講じていく」などと述べている。
足元の経済は個人消費の回復が喫緊の課題となっているが、こうした対策と共に賃上げを実現し、まずは消費者マインドの改善をすることが必要だ。
(terracePRESS編集部)