「デジタル人材育成拡充」と自民幹事長
日本のデジタル化促進に向けて隘路となっているのがデジタル人材の不足だ。政策的にデジタル化を進めるにしても、人材がいなければ絵に描いた餅に終わる。そうした中、自民党の茂木幹事長がデジタル人材を中心とした人材育成を強化するため、支援策などパッケージの拡充を表明した。
政府は現在、「デジタルなどのスキルを身に付け、新しい時代に国民が臨んでいくために人材投資を抜本的に強化していく」(岸田首相)方針で、デジタル化に向けた人材育成を進めるため、3年間で4千億円の政策パッケージを創設した。
デジタル人材に関しては、国内事業会社の9割近くがIT人材の質量ともに不足しているとの声が上がっており、それが今後のデジタル戦略の実施に大きな影響が出ることが予測されている。
その上、全国のIT技術者約100万人のうち、約58%が東京圏に集中しており、地方圏ではさらに深刻な状況となっている。
政府は現在、国全体としてデジタル実装を進めるために必要となる数値目標を2022年度からの5年間で230万人と設定している。まずは2024年度末までに年間45万人を育成する体制を構築するという。
育成する人材は「ビジネスアーキテクト」「データサイエンティスト」「エンジニア・オペレータ」「サイバーセキュリティスペシャリスト」「UI/UXデザイナー」などが想定され、年100万人の新社会人、6800万人の現役社会人を対象とし、大学などの教育機関、経産省など各省の支援策、厚労省の公的職業訓練などを通じて育成する。
これに加えて民間企業などが独自に取り組むDX人材育成があるから、これらが実現すれば、一定程度の人材不足は解消されるだろう。
こうした状況に対し、茂木幹事長は先ごろ政府の施策パッケージについて「5年間で1兆円ぐらいに広げてもいい」と述べた。その上で茂木氏は「2000年代以降、残念ながら日本はデジタル、人への長期的な投資が不足していた。もう1段ジャンプアップさせなければならない」などと強調している。
茂木氏は「日本は、これまで人材への投資が不足していたが、デジタル人材の育成や、非正規の方々のスキルアップを図り、しっかり再就職先も確保する」と述べているから、人材育成、スキルアップはデジタル系に限らないのだろうが、茂木氏のいうように人への投資は、今後の日本の成長には不可欠だ。
それが、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」の核心でもある。デジタル人材に限らず、一人一人のスキルアップを図り、創造力を発揮できるような社会を作り、経済を牽引するような新産業を創出することが日本の成長につながる。
そういう意味では、茂木氏の発言は極めて当を得ており、日本にとっては不可欠な考えだ。
(terracePRESS編集部)