国民生活の安定、「成長と分配の好循環」図る対策策定へ
政府は、物価高などでの国民負担を軽減するための緊急経済対策を、4月末をめどに策定する。メディアは「予備費か、補正予算か」「財政規律が緩む」といった本質的ではない議論をしているが、要は国民経済を安定させるために何をやり、どの程度の財政支出をするかということだ。効果ある対策のとりまとめが必要だ。
岸田首相は29日の閣僚懇談会で、ロシアによるウクライナ侵略などの影響で原油や穀物などの国際価格が高止まりしているほか、一部の水産物などの安定供給に懸念が生じていることなどについて「原油や原材料、食料価格の高騰などが国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし、社会経済活動の順調な回復の妨げになるようなことは避けなければならない」と指摘し、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の策定を指示した。
具体的には、①原油高へのあらゆる対応の検討②エネルギー、原材料の安定供給に向けた調達先の多様化③賃上げの実現と新たな価格体系に向けた中小企業への資金繰り支援④コロナ禍で困窮する人への支援強化-の4点を柱とする。このほか、公共事業の前倒し執行による経済の下支えも行う。
財源について首相は「新たな財源措置を伴うものについては、まずは、一般予備費、コロナ予備費を活用した迅速な対応を優先」すること明示している。これはここ2年の新型コロナウイルス感染症という予測が困難、先が見通せない事態が起きるという経験に基づいて計上したものだ。
予備費の執行については国会の議決を経ずにできるということで財政民主主義を損なうとの指摘もあることは事実だが、もし予備費がなければ、補正予算を編成して審議し、可決成立させるというプロセスが必要となり、機動的な対応などできなくなるものだ。
そして予見が困難なのはいまや新型コロナだけでなく、ロシアのウクライナ侵略という大きな要素が加わったわけで、それらの悪影響を除くために迅速な対応をすべき、というのが国民の要望だろう。
そういう意味では、財政規律を重んじ、予備費を活用しないというのは、「角を矯めて牛を殺す」のと一緒だ。
その一方で、緊急対策を実施するために5兆5000億円の予備費を使い切ってしまうのも悪手だろう。現在の内外の状況は、何が起こるか分からない。現在の新型コロナに対する医療体制は、昨年策定した「全体像」によって整備されているが、今後の警戒も怠るべきではないだろう。
そうであるならば、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の名の通り、緊急に実施しなければならない対策について予備費を活用し、その後、補正予算を編成すればよいということになる。
必要な視点は、国民生活への悪影響をどう緩和するかということだ。原油の高騰に関してはトリガー条項の解除も検討すべき対策の1つとなるが、ガソリン価格が現在実施している対策の想定を大きく超えるような局面があれば解除し、ガソリン税を引き下げることも求められるし、そうした局面にならなければ、解除を政治の目的にする必要はない。
いずれにしても対策を策定するという4月末までにまだ1カ月もあるが、岸田首相が提唱する「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」につなげるためにも、効果的な対策をまとめることが不可欠となる。
(terracePRESS編集部)