クアッド首脳会談さなかに中ロ共同飛行の意味
日本、米国、オーストラリア、インドは先ごろ、4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合を開いた。その首脳会合のさなかに、中ロ両国が爆撃機計6機を日本海から太平洋にかけて共同飛行させ、4カ国の取り組みをけん制した。重大な国際法違反を犯しているロシアと共同して行動する中国は、国際法違反も容認する国家であることを示している。
4カ国首脳会談では、「力による一方的な現状変更をいかなる地域においても、とりわけインド太平洋地域において許してはならないこと、そして、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け引き続き強くコミットしている」ことを確認している。
ロシアによるウクライナ侵略はもちろん、中国による南シナ海・南沙諸島の軍事拠点化も一方的な現状変更であり、尖閣諸島周辺の領海侵入は、現状変更を狙う試みだ。
そうした両国の爆撃機が共同して、日本周辺を飛行したのはけん制というより〝脅し〟とも言える行為だ。
飛行があったのは24日の午前から午後にかけて。東シナ海から日本海に進出した中国の爆撃機の「H-6」2機が、日本海でロシアの爆撃機「TU-95」2機と合流し、東シナ海まで共同飛行を実施。
その後、その中国の爆撃機2機と入れ替わり、新たに飛来した中国のやはり「H-6」とみられる爆撃機2機が、ロシア爆撃機2機との計4機で、東シナ海から太平洋にかけて長距離の共同飛行を実施している。
また、ロシアの情報収集機「IL-20」1機が北海道礼文島沖から能登半島沖までの公海上空を飛行していることが確認されている。
この中ロ両国の行為について岸田防衛相は「このような行動が、クアッド首脳会合が開催されている最中に行われたことについては、これまでと比べ挑発度を増すものと考えている。また、国際社会がロシアによるウクライナ侵略に対応している中で、中国が侵略国であるロシアと共同する形でこのような行動に出ることは、懸念を抱かざるを得ず、看過することはできない」と批判。
松野官房長官も記者会見で、「ロシアがウクライナ侵略という国際法違反を現に行っており、国際社会がやめさせようと努力している中、(中国は)ロシア軍とあえて共同軍事訓練を行った」と指摘、中国に責任ある役割を果たすよう求めたことを明らかにしている。
またロシアについても「ウクライナをめぐる状況を緊迫化させている中で、さらに東アジア地域の緊張を高める行動を取ることは看過できないと申し入れ、重大な懸念を伝達した」と説明した。
国際社会には、民主主義、自由、法の支配という価値観を認めない国も多々ある。ロシアは重大な国際法違反を犯したし、中国も南沙諸島で国際海洋法条約を無視した行為を繰り返している。今回の飛行は自らそのような非民主国であることを示したものだ。
(terracePRESS編集部)