賃金アップ、自民は政策動員、立憲はお粗末
「成長と分配」が新しい日本経済のキーワードとなっている。岸田政権や与党自民党が成長と分配の両立を重視していることに対して、立憲民主党は消費税減税など〝後先考えない〟分配重視を有権者に訴える選挙戦略。しかし、労働組合を支持基盤としていながら立憲の賃金向上政策はお粗末で、賃金アップについて真面目に考えているのか疑いたくなる。
立憲は参院選の公約で賃上げについて「賃上げ政策を総合的に展開し、消費を起点とした経済活性化を実現します」と強調している。
その上で具体策として「時給1500円を将来的な目標に、中小零細企業を中心に公的助成をしながら、最低賃金を段階的に引き上げます」としている。
賃金アップを実現するために最低賃金の引き上げが必要なことは確かだが、急激な引き上げは中小零細企業に大きな影響を及ぼす。だからこそ、立憲は「段階的な引き上げ」「公的助成」を盛り込んでいるのだろう。
ところで、驚くべきことに立憲の賃上げ政策はこの最低賃金の引き上げだけなのだ。1500円にしても「将来的な目標」としているわけだから、賃金政策は「最低賃金を段階的に引き上げます」と言っているに過ぎない。「『同一価値労働同一賃金』の法制化」も盛り込まれているが、足元の賃上げについては最低賃金の引き上げだけだ。
では、自民党の賃上げ政策はどうか。公約では「人への投資を促進し、25年ぶりの本格的な賃金増時代を創ります。同一労働同一賃金、男女間賃金格差解消、最低賃金引上げ、賃上げ税制、取引関係の適正化、公的価格の見直し、非財務情報の開示などを進めます」と総合的な賃上げ政策の実施を強調している。
政府与党は、最低賃金についてはすでに「骨太方針2022」で「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が 1000 円以上となることを目指し、引上げに取り組む」としており、すでに動き出している。
さらに注目すべきは公約に盛り込まれている「賃上げ税制」だ。「賃上げ税制」は、従業員の給与引き上げを支援する制度で、すでに政府は賃上げをこれまで以上に促進しようと、2022年度の税制改正で拡充している。
例えば、大企業だったら雇用者全体の「給与等支給額」の増加額の最大30%を税額控除でき、中小企業の場合は最大40%控除できることとなった。大企業はこれまで最大20%、中小企業は最大25%だったから、大幅な拡充となっている。
企業からみれば、従業員の給与を増額しても税額控除分の負担軽減ができることになり、コスト増になるのを避けることができる。
今春闘は昨年を上回る結果となり、久しぶりの明るい春闘となったが、その背景には賃上げ税制の影響があったことも間違いないだろう。
こうした取り組みを含めて総合的に賃上げを実現していくのが与党である自民党の政策だ。賃上げは民間企業の取り組みで、政府が指示すれば実現するものではない。自民党の公約では「本格的な賃金増時代を創る」としているが、賃上げを実現するにはさまざまな政策を動員することが不可欠なのだ。
一方、立憲は労働組合を支持基盤としている政党だが、実は賃上げ政策は貧弱そのもの。「賃上げ政策を総合的に展開」とは言うが、その文言は空虚なものでしかない。
(terracePRESS編集部)