「しなやかな労働市場」の構築を
厚生労働省職業安定局の「雇用政策研究会」が先ごろ、これまでの議論を整理し「しなやかな労働市場」の構築の必要性を指摘した。少子高齢化による労働供給制約がある中で、新型コロナウイルス感染症なども契機として労働市場にはさまざまな変化も出ている。産業構造の変化に柔軟に対応できる「しなやかな労働市場」の構築が急務だ。
日本は少子高齢化の進展という労働市場の隘路がある一方、労働生産性の伸び悩みなどの構造的課題も抱えている。
そうした中で研究会は日本の労働市場の課題として「労働供給制約とそれに伴う人手不足」「働き方の多様化」「デジタル化への対応と労働生産性の向上」「豊かな人生を支える健康的な職業生活の実現」「都市部と地方部における地域間格差」の5点を課題として掲げている。
例えば「働き方の多様化」では、「(コロナにより)非正規雇用労働者を中心に多くの雇用が失われた一方、フリーランスやプラットフォームワーカーといった新しい働き方も注目されている」と指摘。
また、「デジタル化への対応と労働生産性の向上」では「テレワークの活用や企業のDXへの認識が高まるなど、デジタル化に向けた動きが加速しており、デジタル化への対応の差が労働生産性、賃金、そして柔軟な働き方といった格差につながるおそれがある」としている。
こうした課題を克服するために研究会が掲げたのが「しなやかな労働市場」で、コロナ禍のような不測の事態やグローバル化のさらなる進展、急速な技術進歩やデジタル化による産業構造の変化に柔軟に対応でき、かつ回復力を持つ、持続可能な労働市場を目指しているものだ。
それを実現するためには①労働者の多様性やワーク・エンゲージメントを意識し、労働者の意欲と能力を高め、引き出す②企業外の様々な人的資本蓄積の機会を活用する取組も含め、企業内部の人材育成を強化③ライフステージや就業ニーズに応じた教育訓練や働き方の選択肢を拡充することで企業の人材確保や社会全体の労働供給の増加につなげる④労働市場の基盤強化を行い、多様性に即したセーフティネットを構築-することなどが必要という。
その結果「短期的な経済情勢の変化や長期的な産業構造の変化に対して柔軟(フレキシブル)に対応でき、かつ回復力(レジリエンス)を持つ、持続可能(サステイナブル)な労働市場」を創出するとしている。
新型コロナでは医療体制の強化の必要性などさまざまな教訓を得た。労働市場のあり方もその一つで、多様性のある働き方の実現や労働生産性の向上は急務だ。地方のデジタル化も不可欠で、岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現も期待される。
(terracePRESS編集部)