中国の弾道ミサイル落下という現実
中国が台湾周辺海域での軍事演習の一環で発射したミサイルが日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したことは、現在のアジアの緊張状態を物語っている。政府は防衛力の増強を計画しているが、野党や一部メディアからはその方針を批判する声も出ている。現実に目を向け、日本の安全保障を確保するため、抑止力を強化する必要性があることを再認識すべきだ。
今回の中国の軍事演習は、台湾が平和で安全に生存する権利を侵害するものだ。今回の軍事演習は、米国のペロシ下院議長が2日から3日にかけて台湾を訪問したことに対する軍事的な対応措置だ。
しかし、米国の議会に属した人物が訪台することは違法なこともでなく、仮にそれが中国の政策と相容れないとしても、大規模な軍事演習を行うことはエスカレートさせた対応というほかはない。
中国の軍事演習を受けG7外相は4日、「台湾海峡の平和及び安定の維持に関するG7外相声明」を発表した。
共同声明では「(G7は)台湾海峡及びその他の地域において、ルールに基づく国際秩序、平和及び安定を維持するという我々の共通のコミットメントを再確認する」と指摘。
その上で「我々は、不要なエスカレーションを招く危険がある、中華人民共和国による最近の及び発表された威嚇的な行動、特に実弾射撃演習及び経済的威圧を懸念する。台湾海峡における攻撃的な軍事活動の口実として訪問を利用することは正当化できない」と中国を批判した。
今回の軍事演習は、まさに台湾を囲むエリアで行っており、その演習で4日発射された弾道ミサイルのうち5発が、沖縄県・波照間島の南西の日本のEEZ内に落下。さらにEEZ外にも1発が落下しているが、こちらは与那国島から約80キロしか離れていなかったという。
また、EEZ内に落下した5発のうち4発は台湾本島上空を飛翔したともみられている。
日本の抗議に対し中国外務省は「EEZの件について日本も分かっているように両国は関連海域でまだ境界を画定していない。日本のEEZの言い分は存在しない」と反発している。仮にEEZが確定していないにしても、日本の領土近くに弾道ミサイルを落下させることは威嚇的な行動にほかならない。
中国側はさらに、4日に予定されていた日中外相会談をキャンセルしたほか、鄧励外務次官が駐中国日本大使を呼び出し「中国の内政に干渉し、誤った道を進むべきではない」などと申し入れている。
岸田政権は今後5年間で防衛力を増強する方針を示している。その際は、防衛費をGDP比で2%程度にする方向とみられているが、今回の中国の威圧的な行動をみれば、その判断が的確であることは間違いない。
日本は、中国という基本的な価値観が異なる専制主義国家が隣国で、その中国からの脅威にさらされているのだ。国民もそうした認識をあらためて持つべきだろう。
(terracePRESS編集部)