対日直接投資拡大の好循環
日本の経済活性化、また地域の産業発展を考える上で有効な手段の一つが対日直接投資といわれている。海外企業が日本に投資をするには、日本のマーケットが期待できるものであることはもちろん、日本経済が活性化していなければならない。海外企業からみて、日本の市場に魅力がなければ、投資が行われないのは当然だ。
その対日直接投資だが、実はここ数年順調に拡大している。ジェトロによると、2017 年末時点の対日直接投資残高は28 兆5,545 億。2016 年末から3,227 億円の増加(1.1%増)で、4 年連続で過去最高を更新となった。2018年は30兆円近くに達しているとみられており、5年連続で拡大していることは間違いない。これもアベノミクスの大きな成果だ。
対日直接投資残高を地域別にみると、最大は欧州の14 兆917 億円(前年比3.1%増)で、全体の約半分の割合を占めている。欧州の場合は、製造業の比率が高いのが特徴の一つだ。
北米は6 兆8,513 億円と、前年より6.1%減となった。北米の約8割が非製造業であり、金融・保険業が全体の過半を占めている。米国は2017 年に米保険大手が日本の生保市場から撤退したことなどが前年比で減少した要因だが、それでも国別で見ると米国が日本への最大の投資元国となっている。
その中で、着目すべきはアジアからの対日直接投資残高が2000年比で10倍超となり、欧州、北米に次ぐ対日直接投資の担い手に急成していることだ。アジアからは、LCC(格安航空会社)による日本の地方都市への定期便の新規就航、キャッシュレス決済サービス)といったインバウンド関連、越境EC運営企業による調達拠点の設置に加え、新しいサービス形態の一つであるシェアリングエコノミー分野での投資が拡大しているという。
ジェトロによると。最近のトレンドとしては、イノベーションの担い手であるスタートアップの日本におけるエコシステムに外国企業が相次いで参画していることや、外資系のコワーキングスペース、アクセラレーター、ベンチャーキャピタルなどが海外での経験に基づき、日本の創業環境に寄与していることだ。
スタートアップでさまざまな隘路にぶつかるケースが多い中で、外資が、成長に必要なノウハウの提供、新たなビジネス・イノベーションを生む機会の提供などを行っているというわけで、日本の経済活性化にも重要な役割を果たしていることになる。
こうした状況をさらに活用するため安倍政権は昨年10月、外国企業の誘致に積極的な地方自治体を政府が一丸となって支援していく「地域への対日直接投資サポートプログラム」をスタートさせ、公募により宮城県、福島県、神戸市、三重県松阪市、長野県小諸市、旭川地域産業活性化協議会など24自治体への支援を開始している。
対日直接投資を拡大させ、地域経済の活性化にもつなげれば、新たな好循環が生まれる。対日投資をめぐる安倍政権の戦略は、高く評価されるべきだろう。
(terracePRESS編集部)