共産もメディアも政党政治、議院内閣制を無視?
共産党の小池書記局長は先ごろのテレビで、5月3日に開かれた「第21回公開憲法フォーラム」で安倍首相が改憲を呼び掛けたなどとして批判した。メディアも首相がこの会合で「2020年の憲法改正の考えを改めて表明した」などと報じた。しかし、小池氏もメディアもあえて曲解している重大なことがある。
安倍首相は、このビデオの冒頭「自民党総裁の安倍晋三です」と述べ、あえて自民党総裁としてのビデオメッセージであることを強調している。だから、「首相が呼び掛けた」というのは、完全な偽情報、フェイクニュースとなる。
改めて指摘するまでもないが、日本は政党政治、議院内閣制を採用している。通常であれば最大多数党が政権を担い、その政党の党首が首相となる。
そして、憲法改正は、憲法第96条で「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と規定している。
憲法改正を発議するのはあくまでも立法府である国会であり、行政府である内閣は関与すべきではないことは明らかだ。
しかし、日本の場合、最大多数党の党首が首相を務めるのが通例であるから、首相は日本人の中で唯一、厳格に首相と政権与党の党首の地位を使い分けなければならないことになる。つまり内閣総理大臣でかつ自民党総裁の安倍晋三氏は、場合に応じて立場を使い分ける必要があるわけだ。
そして実際に、公開フォーラムのビデオメッセージで「自民党総裁の安倍晋三です」といい、自民党総裁としてのメッセージであることを明言している。
小池氏はテレビで「首相が期限を区切って、9条に自衛隊を書くという具体的なことまで示して改憲の旗振りをすること自体が立憲主義を踏みにじるものだ」と批判しているが、首相と自民党総裁の立場をごっちゃにする小池氏の方がまさに議院内閣制という制度を無視しているのだ。
共産党もメディアも、もし憲法を大事にするならば、こうした事実に則して物事を言うのが責務だ。そうでなければ国民に無用な混乱をもたらすことになる。
(terracePRESS編集部)