野党「年金が争点」に国民はどう判断すべき
「老後2000万円不足」という金融庁の審議会の報告書問題で野党から「年金問題を参院選の争点にする」との声が上がっている。消えた年金問題が争点となり、民主党が大勝した2007年の参院選の再来を狙ってのことだが、この選挙では、年金財政の持続性や制度体系といった本質的な課題ではなく、「消えた年金問題」だったことは言うまでもない。
もし参院選で野党が年金問題を争点とするのであれば、野党やメディアのミスリードに基づく単なる2000万円不足問題への批判ではなく、野党が本質的な課題に対応する公約を打ち出すかどうかを有権者は見極める必要がある。
実は、自民党は今回の参院選の公約で、すでに「人生100年時代の安心社会」として「支える側と支えられる側のリバランスなどを通じて、年金をはじめ人生100年時代に相応しい、社会保障制度を構築する」としている。改めて指摘するまでもないが、2004年の年金制度改革の「100年安心」は制度の持続性を示したものだが、この公約の「人生100年時代に相応しい社会保障制度」とは、まさに一人一人が100歳まで安心して暮らすことのできる社会を構築するというものだ。
もちろん、ここには「支える側と支えられる側のリバランス」とあるから、今後、給付と負担の見直しもあるのだろうし、年金受給年齢の選択肢の拡大や私的年金制度の活用などもある。
しかし、「人生100年時代」はそうした年金制度だけではなく、多様な働き方、特に高齢者の就業機会の確保なども重要な視点となる。この点についても、自民党の公約には「高齢期の多様な就業機会の確保」なども盛り込まれている。
これに対して、野党側は「年金問題が争点」とするならば、立憲民主も国民民主も、年金制度改革案を提示すべきだが、残念ながらいまだに国民に示されていない。
例えば、国民民主党は結党時の「私たちの理念と政策の方向性」として「持続可能な生活保障の制度は、『人生100年時代』には不可欠であり、私たちは、給付と負担のバランスのとれた政策をまとめあげ、建設的議論を展開していきます」と述べているが、具体策は提示されていない。立憲民主党に至っては、やはり結党時の政策として「持続可能で暮らしを下支えする、国民に信頼される年金制度を確立します」としているが、どのような制度にするのか、全く説明がないのだ。
立憲民主や国民民主の源流である民主党は2007年の参院選の公約で「年金の財源については根本から改め、まず、年金の基礎部分は全額を税で賄うことにし、消費税の全税収をその財源に充てる」などと主張した。もちろん、消費税の全額を年金に全額充てることは絵空事でしかなかったが、それでも、現在のようにただ単に今回の問題をテコに批判だけするという姿勢よりは幾分ましだったかもしれない。
(terracePRESS編集部)