「経済政策」とは言えない「家計第一」
国民民主党が、「家計第一」を訴えている。「家計第一」と言えば「家計」を「第一」に考えるというイメージになり、国民受けはいいだろう。聞こえは良いが、果たして
玉木代表は講演などで「可処分所得を増やして消費力をアップする。消費を軸とする好循環を回していくことが重要で、『家計第一の経済政策』こそが今求められる一番の経済政策だ」と指摘しているが、つまり「家計第一」は国民民主党の経済政策ということになる。
さらに驚くことに、玉木代表は(1)マイナス金利はやめる(2)消費税は凍結(3)賃上げ減税(4)家計を助ける現金・現金給付―の4項目を列挙し、そうした施策で消費を拡大することを強調しているのだ。
玉木氏の主張は、可処分所得を増やせば、消費は活性化するという、極めてシンプルな考えだ。「みんなモノを欲しがっている」「金さえあれば欲しいものを買うはずだ」「だから可処分所得を増やそう」。そんな単純社会に合致した思考なのだろう。
もちろん、まず、ここで問題なのは玉木氏の言うように、それほど家計は可処分所得の低下に苦しんでいるのかどうかということだ。
総務省の調査によれば、家計に残ったお金の比率を「家計黒字率」というが、総務省の調査によれば、2018年の家計黒字率(2人以上の勤労者世帯)は2000年以降で初めて30%を超えている。その要因は、働く女性が増えて家計収入を押し上げている一方、消費を控えてお金をためているからだ。
家計でみれば、世帯収入は増えているのに、消費に回ってないのが実態だ。これでは、玉木氏の言うように家計を増やせば、消費が活性化するとは限らないということになる。
では、なぜ消費が活性化しないのだろうか。その要因の一つが、消費市場の変化だ。消費者が消費に対する態度を大きく変えているのだ。消費者の嗜好は多様化し、高齢化や家族の姿・暮らし方も変化している。それに伴って消費市場も大きな転換点を迎えている。
経済産業省の報告書によれば、消費者の意識調査で、「とにかく安くて経済的なものを買う」としていたのは2000年が50.2%だったのが、2015年は34.5%に低下。「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」は22.9%だったのが31.8%に増大している。「自分の好きなものはたとえ高価でも貯金して買う」も15.1%から21.7%になっている。
また、物の豊かさを求める人より、心の豊かさを求める人の方がずっと多い。
つまり、そうした消費市場では、単に家計所得を増やせば消費が活性化するというものではない。玉木氏のように単純に「消費を軸とする好循環を回していく」ことができるとは限らないのだ。
「家計第一」などという聞こえの良いフレーズを連発するのはいいが、これで「経済政策」などと胸を張られては困る。
(terracePRESS編集部)