野党が見て見ぬふりする日米貿易協定の成果
日米貿易協定の承認が国会の焦点の一つとなっている。野党側は、外交文書である首脳会談の議事録などの開示要求など無理難題を主張しているが、野党はそもそも、今回の貿易協定の成果を正しく認識できていないのか、見て見ぬふりをしているのだろう。
日米貿易協定では農産物や工業製品の関税引き下げなどが決まったが、協定の内容をみれば、日本政府の〝外交的勝利〟と言えるほどのものとなっている。
農林水産物については、そもそも2018年9月の日米首脳会談の共同声明で「日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること」と明記し、TPPの枠内に収めることを事前に決定付けていた。実際、日米貿易協定でもコメは除外し、小麦はTPPと同内容でマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)を45%削減、牛肉もTPPと同内容で9%まで関税削減し、セーフガード付きで長期の関税削減期間を確保、豚肉もTPPと同内容だ。
このほか、脱脂粉乳、チーズ、リンゴ、オレンジ、砂糖、でん粉、鶏肉などほとんどがTPPと同内容となっている。特定の用途、種類のホエイなど米国枠を設けたものもあるが、日米共同声明から逸脱した合意はしていないのだ。
では、工業製品はどうか。こちらは基本的に、日本企業の輸出関心が高く貿易量も多い品目を中心に、即時撤廃を含む、早期の関税撤廃、削減を実現しているのだ。
例えば、日本に競争力がある工作機械では現行税率4.2%のマシニングセンタ、現行税率 4.2%~4.4%の旋盤、現行税率3.1%のゴム・プラスチック加工機械、現行税率 3.5%の3Dプリンタを含むレーザー成形機などの関税は2年目に撤廃される。現行税率 2.7%の燃料電池は即時撤廃だ。
また地域経済を支える産業ともなっている楽器や眼鏡、サングラス、自転車、自転車部品なども産品によって即時撤廃~2年目半減などの合意となっている。
このように多くの日本側産品の関税の撤廃、削減の約束を盛り込むことに成功している一方、日本側は有税工業品について譲許していないのだ。この協定内容をみれば、今回の日米貿易協定が成功したことは明らかだ。
もちろん、今回の協定で日本の農林水産物の生産減少額は約600億円~約1,100億円、 TPPを合わせた生産減少額は約1,200億円~約2,000億円になることが見込まれているため、国内農業の体質、競争力強化のためにはきめ細かい対策が必要になることは間違いないし、実際、それらの対策はすでに行われている。
そして、野党は「日本が求めていた関税撤廃は確約されていない」などと批判している自動車分野だが、これについては、米国附属書に「関税の撤廃に関して更に交渉」と明記している。一方、関税の引き上げなど是正措置を発動する権限を大統領に付与する規定である米国の通商拡大法 232 条の扱いについては「両国は、両協定の誠実な履行がなされている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない」との旨を日米首脳共同声明で確認しているほか、 数量制限、輸出自主規制等の措置を課すことはない旨は閣僚間でも確認しているのだ。
(terracePRESS編集部)