空想的綱領は現実を見ない立憲民主党そのもの
立憲民主、国民民主両党などによる合流新党「立憲民主党」がスタートした。旧立憲民主党が母体となっているとはいえ、新しい政党としての政策らしきものは未だ公表されていない。有権者が立憲民主党を判断できるのは現時点では新しい綱領ということになるが、これは〝空想的〟な社会をイメージしているだけのもの。「政権を獲る」と勇ましい声は聞こえてくるが、机上の空想論を振り回されても有権者は途方に暮れるしかない。
綱領では「私たちの目指すもの」として ①立憲主義に基づく民主政治 ②人権を尊重した自由な社会 ③多様性を認め合い互いに支え合う共生社会 ④人を大切にした幸福を実感できる経済 ⑤持続可能で安心できる社会保障 ⑥危機に強く信頼できる政府 ⑦世界の平和と繁栄への貢献-の7項目を掲げ、一つの項目につき数行の説明がついている。
この綱領を読むと、どうやら立憲民主党は経済の拡大、発展を重要視していないことは明白だ。
「人を大切にした幸福を実感できる経済」の項目では「公平に開かれた市場の中で、目先の効率性だけにとらわれずに、人を幸せにする経済」「『人への投資』を重視し、過度な自己責任論に陥らず、公正な配分により格差を解消し、一人ひとりが幸福を実感できる社会を確立」などと説明しているが、少子高齢化が急速に進み、国難ともいわれる中で、どのようにして日本の経済規模を維持し、拡大していくかと言う視点は見当たらない。
「食料やエネルギー、生きるために不可欠なサービスなどを確実に確保できる経済をめざす」などとも謳っているが、経済が縮小する社会では、1人1人が自立することも食料やエネルギーを確保することも困難になる。もちろん「持続可能で安心できる社会保障」の実現などおぼつかなくなる。
枝野代表は9月19日の街頭演説で、景気対策で消費の喚起の緊急措置として、中間所得層の所得税を1、2年間限定で免除することや低所得層への現金給付、消費税の期間を区切った減税―などの必要性を公言したが、こうしたカンフル剤的な景気てこ入れ策は誰でも思いつくものだ。政権を目指す政党として重要なことは、その前提にある日本経済の活性化戦略であるはずだ。
確かに「自然エネルギー立国を目指し、経済をけん引する」などと語ってもいるが、自然エネルギーだけで日本人が食べていけると考えているとしたら、とんだ笑い話だ。
綱領では安全保障について「国際協調と専守防衛を貫き、現実的な安全保障や外交政策を推進」「健全な日米同盟を軸に、アジア太平洋地域とりわけ近隣諸国をはじめとする世界の国々との連携を強化」などと記しているが、緊張が高まる北東アジア情勢に対する危機感など微塵も感じられない始末だ。
立憲民主党の綱領は、どうやら空想的な平和主義、空想的な経済活性化、空想的な社会を目指す空想的な綱領でしかないようだ。
(terracePRESS編集部)