新型コロナ国内感染者10万人の意味
「国内の感染者10万人突破」。10月30日の朝刊各紙やテレビの情報番組などで、こんな見出しのニュースが伝えられた。「10万人突破」などという情報に触れると危機感が高まるかもしれないが、これはあくまでもこれまでの感染者の累計にすぎない。さも「大変な事態になった」と伝えるメディアの姿勢も問われるところで、メディアは国民に対し、誤解を呼ばないよう冷静に判断できる情報を提供することが求められる。
確かに、感染者が700人を超えた旅客船ダイヤモンド・プリンセス号を含めた国内の感染者は、29日に累計で10万人を突破したことは事実だ。ただし、同船の感染者はそれまで国内発生事例とはカウントしていなかったが、その後、同船を除いても国内の累計感染者は10万人を突破した。
厚労省の集計によると、10月31日午前0時現在で国内の感染者が99,214人、空港検疫が1,163人、チャーター便帰国者が15人で、感染者の累計は100,392人となっており、10万人を上回っている。
しかし、これはあくまでも感染者の累計の数だ。この10万人のうち「退院又は療養解除」となった人が92,475人、残念ながら亡くなった方が1,755人いる。
そして、「確認中」の人たちを除けば、「入院治療等」を要する人が6,106人で、そのうち重症者の人が161人となっている。
現在の日本の新型コロナの状況をみれば、感染者は6,000人超で、そのうち重症者は200人ということになる。新型コロナの感染状況を冷静にみるのなら、新規感染者数とこれらの数字とが重要になる。
メディアが伝える累計感染者は、累計だから常に増えるしかない。累計感染者数をみても新型コロナの感染者が増えているのか、減っているのか、その方向性は分からない。
もちろん、入院治療などが必要な感染者が6,000人程度だからといって、感染防止をおろそかにしていいということではない。日本も欧州各国や米国のように万単位の新規感染者が急増するような可能性を否定できないだろうし、そうなれば医療体制を維持することすらままならなくなる。
そのような事態を未然に防ぐためには、やはり3密を避けることはもちろん、新型コロナウイルス感染症対策分科会が10月23日に提言した「感染リスクが高まる『5つの場面』」を十分注意しながら、日常生活を送るしかない。
とはいえ、メディアが新規感染者と累計感染者を中心に伝えるかぎり、国民に新型コロナの正しい状況把握は難しくなる。メディアに正しい状況を分かりやすく伝える努力が乏しいのだ。
多くのメディアは新型コロナの感染が発生した当初から、「政府の対応が後手後手」などといった批判を繰り返してきた。その一方、持続化給付金や雇用調整助成金、金融機関の融資など政府が行った対策を熱心に伝えたとは言い難い。それが日本のメディアの実態なのだろう。
(terracePRESS編集部)