地方重視の第4次安倍内閣
臨時国会での安倍首相の所信表明は6部構成で、分量でいえば約6000字となった。1の「はじめに」と6の「おわりに」を除くと、政策の部分は4部となる。そのうち5の「平成の、その先の時代の新たな国創り」は、大阪で来年開かれるG20サミット、東京五輪、皇位継承、憲法改正について述べたところで、それを省くと残りは3部。
この3部で今後の政策が語られているのだが、2の「強靭な故郷づくり」は災害対策、災害復興、国土強靭化などで、4の「外交・安全保障」は文字通り外交問題などを語った部分だ。そして、残る3が「地方創生」となっている。
災害・国土強靭化関連、外交・安保関連と並んで「地方創生」が並んでいることは、安倍政権が地方を重視している証拠だろう。もちろん、ここでは地方以外にも雇用制度改革や消費税増税についても言及しているのだが、真っ先に述べたのはやはり農林水産業の活性化だ。
マスメディアは雇用制度や消費税については関心を持つが、地方創生には目も向けない。しかし、「地方創生」という項目を立てるほど、安倍政権は地方を重視しているのだ。
安倍首相は演説で「生産農業所得は、この18年間で最も高い3.8兆円まで拡大」「農林水産物輸出も5年連続で過去最高を更新し、昨年は8000億円を超えた。本年5月、中国への精米輸出施設の追加で合意し、コメのさらなる輸出拡大にも取り組んでいる」と説明。
その上で「若い人たちが、自らの意欲とアイデアで、新しい農林水産業に挑戦ができる。自分たちの未来を託すことができる『農林水産新時代』を切り開く」と強調している。
もちろん、1次産業だけではない。高齢化率36.5%という高齢化に直面している島根県雲南市が「日本で一番、若者がチャレンジしやすい街を目指す」として、若者を呼び込んでいる取り組みを紹介しながら「雲南市には、今、250人近い若者たちが移住し、地域の新しい活力となっている。少子高齢化というわが国最大のピンチもまた、チャンスに変えることができるはず」と呼びかけた。
憲法改正や入管法改正、消費税の増税など確かに安倍政権の足元にはさまざまな課題が山積し、それぞれについて議論が分かれる点があることも事実だ。
しかし、その前に、日本は少子高齢化という国難に直面していることを忘れてはならない。少子高齢化の影響がすでに顕在化しているのが地方であり、その地方を活性化すること、すなわち地方創生は、日本社会の再建にほかならないのである。
メディアは冷ややかで、あまり社会に伝えもしないため、残念ながら国民にもあまり理解されていないかもしれないが、「農林水産新時代」を切り開くなど安倍政権が地方を重視するスタンスをとっていることを忘れてはならない。