比較する意味がない地位協定
日米安保をめぐり一部の人々が日米地位協定について、ドイツやイタリアの地位協定のように基地の立ち入りなどが認められるよう米側に求めるべきとの指摘をしている。これに対し河野外相は「一部を取り出して比較をすることには意味がない」との考えを示しているが、相互防衛の義務があるNATO加盟国と日米安保体制を比較することはまさに意味がない。
日米地位協定は、そもそも、在日米軍が円滑に活動できるよう、米軍による日本での施設・区域の使用、日本での米軍の地位について規定したもので、日本が有利か不利かという問題ではない。
比較するのなら、条文だけでなく、実際の運用も比べなければならないし、一概に論ずることが妥当ではない。
それでも、日米地域協定は不利だという人もいるが、例えば、米軍人が刑事事件の被疑者になった場合、身柄がどの時点で受入れ国側へ引き渡されるかという問題では、日米地位協定に基づく運用のほうが、他の国の地位協定よりも早い時点での引き渡しとなっている。
よく、米軍人が日本で事件を起こしても、米国が日本にその軍人の身柄を渡さない。日本側に身柄がなければ、米軍人はアメリカに逃げ帰ったりする、という声も聞く。
しかし、これは誤解で、日本で米軍人や軍属が公務外で罪を犯した場合で、日本の警察が現行犯逮捕などを行ったときには、その被疑者の身柄は日本側が確保し続けることになっている。
身柄が米側にある場合には、日米地位協定に基づき、日本側で公訴が提起されるまで米側が拘禁するが、被疑者の身柄が米側にある場合も、日本の捜査当局は必要性に応じて、米軍当局に対して、例えば被疑者を拘禁施設に収容して逃走防止を図るよう要請することなどもあるという。
また、殺人、強姦などの凶悪な犯罪で日本政府が重大な関心を有するものについては、起訴前の引渡しを行う途が開かれているとされている。
いずれにしても、国会では共産党などが、日本が不利などと指摘し、それをまた朝日新聞や琉球新報などの左翼メディアが拡散するという構図が出来上がっている。
実態などを無視して、日米地位協定が欠陥と言わんばかりの論調に惑わされてはいけない。