人の流れ加速狙い広がる地方への人材支援
地方の活性化を政権の重要課題に掲げる菅政権は、地方自治体や地方企業への人材支援を本格化させる。霞ヶ関の若手職員を派遣したり、金融機関などの人材を派遣したりとさまざまな方策で地方を支援する。地方を活性化することで、首都圏から地方圏への人の流れを活発化させる。きめ細かい支援により地方活性化の実効性を高める考えだ。
国交省が新たにスタートさせるのが、中山間地域や離島などの小規模な自治体に若手職員を派遣する取り組みだ。
過疎化が進む小規模自治体は、職員が多忙になっている一方で、観光振興や防災対策、交通手段の確保など課題が山積している。
このため同省は、地域振興などを担当する国土政策局に、20歳代の若手を中心とした専門チームを設け、メンバーが月に1度ぐらいのペースで市町村へ出向き、一定期間勤務する仕組みに取り組む。
一方、金融庁は、地域の中堅・中小企業を支援する「地域企業経営人材マッチング促進事業」を開始する。
大手銀行・大手商社のほか関係省庁の協力を得て、各業界の大企業に協力を要請し、1万人規模の人材をリストアップし、地域経済活性化支援機構(REVIC)にリストを備える。同時に、地銀などに仲介能力の向上や人材紹介会社との連携などを強化するよう求め、地域の中堅・中小企業とリストアップした人材とのマッチングができるような態勢を構築するという。
2020年度第3次補正予算に計上している経営人材を新たに採用した地域企業への補助約31億円を活用する。
さらに、デジタル化についても人材支援を行う方針だ。自治体もデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めることが不可欠となっているが、ICTの知見を持ち、現場に即した技術導入の判断などができる人材確保に苦慮している自治体も多い。
このため、総務省は新たに発足するデジタル庁と連携して、市町村のデジタル人材確保を支援する仕組みを構築すると同時に、外部任用の経費などに対し、特別交付税措置を講じることを決めている。
地方への人材支援といえば、都市地域から過疎地域などに住民票を異動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱する制度が知られている。隊員は、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRなどの地域おこしの支援などを行っている。その地域おこし協力隊員は、2020年度で過去最高の5556人に達している。
こうした地域に密着した支援はもちろん、自治体支援、地方企業支援を促進することで、東京から地方への人の流れを加速させることにつながる。
(terracePRESS編集部