中国を牽制し、日本の安全にコミットした米国
菅首相とバイデン米大統領による日米首脳会談が行われ、中国の東シナ海での現状変更への試みや、台湾問題などについて協議し、共同声明では「台湾海峡の平和と安定」と「台湾」の文言を盛り込んだほか、日米同盟の一層の強化を謳った。メディアなどには「米中対立に日本が巻き込まれる」などの喧伝もあるが、極東アジアの安定への米国のコミットを確約させた会談だったと言えるだろう。
共同声明では「日米同盟は、普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントに基づく自由で開かれたインド太平洋、そして包摂的な経済的繁栄の推進という共通のビジョンを推進する。日米両国は、主権及び領土一体性を尊重するとともに、平和的な紛争解決及び威圧への反対にコミットしている」と述べている。
「普遍的価値」というのは、自由、民主主義、人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序などのことで、共同声明では両国が、国際秩序への挑戦に対抗することを強調している。
もちろん、その「挑戦」の筆頭にあげることができるのが、近年強まっている中国の覇権主義的行動のことだ。
事実、共同声明でも「ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した」と指摘し、さらに「日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明する」と、中国を名指ししている。
その上で、台湾問題に関し「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」と中国を牽制している。
中国のGDPは現在、米国の70%程度となっている。その経済成長と共に継続的に高い水準で国防費を増加させ、核・ミサイル戦力はもちろん、海上や航空戦力を中心にして、軍事力の量だけでなく質も急速に強化しているのだ。
その影響を最も受ける先進国は日本であり、それは尖閣諸島周辺海域での中国の行動をみれば明らかだろう。軍事的脅威を測る際の指標には相手国の「意思」と「能力」があるが、尖閣での中国の行動をみれば、日本にとって軍事的脅威となっているのは明白だ。
そうした中で、日本の安全をどう維持するのか、それが日本にとっての重要な課題なのだ。
共同声明では「米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した。米国はまた、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを再確認した」としている。
日本の安全保障を考える上で中国は最大の脅威だ。その対中抑止に米国は改めてコミットした。そういう意味で、菅外交の成功だったことは間違いない。
(terracePRESS編集部)