安全と繁栄目指す日米の新たな同盟
菅首相とバイデン米大統領による初の日米首脳会談は、両国の安全や繁栄を維持するための新たな同盟関係の構築をスタートさせるものとなった。太平洋・インド洋地域の安定を図ることはもちろん、急激なイノベーション、気候変動、新型コロナウイルス感染症対策や健康安全保障など多岐にわたっており、日米両国の関係が新たなステージに入った。
今回の首脳会談は、「日米気候パートナーシップ」「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」の2つの文書を発表し、共同声明も「何よりも、日米両国は、両国のパートナーシップが今後何十年にもわたり、両国の国民の安全と繁栄を可能にすることを認識し、確固たる同盟という考え方そのものへの投資を新たにする」と結んでいる。
これは、日米両国が持続可能で、健康、グリーンな世界経済の復興を日米両国がリーダーシップをとり、同時に気候変動についても、両国が世界の気温上昇を摂氏1.5度までに制限する努力と2050年温室効果ガス排出実質ゼロ目標に向かい、2030年までに気候行動を取ることにコミットしたものだ。
さて、こうした日米同盟の新ステージで注目されるのが、ハイテク分野などでの協力だ。
「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」では「日米両国は、開放性及び民主主義の原則にのっとり、持続可能でグリーンな世界の経済成長を主導する。これは、がんムーンショット、バイオ・テクノロジー、人工知能(AI)、量子科学技術、民生宇宙協力(アルテミス計画、小惑星探査等)、安全な情報通信技術(ICT)等の多様な分野での研究・技術開発に関する両国の協力を含む」としている。
ここで「開放性及び民主主義の原則にのっとり」と記しているのはもちろん、開放性がなく、民主主義国ではない中国を意識している。
米国は、トランプ前政権に続き、バイデン政権でも中国を「最大の競争相手」と位置付けており、中でも経済力・軍事力の決め手となるハイテク分野で覇権を争っている。民主主義国ではない中国が覇権を握れば、それを背景にした拡張主義で多くの民主主義国への影響が避けられなくなる。
そういう意味で、今回合意したのは、経済安全保障のためのパートナーシップの深化ということになる。
具体的には、高速大容量規格「5G」と次世代規格「6G」の最先端通信技術開発に米国が25億ドル、日本が20億ドルの計45億ドル(約4900億円)を投資することで合意している。
またサイバーセキュリティーの強化では「安全な連結性及び活力あるデジタル経済を促進する」とし、「グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」を立ち上げるとしている。
デジタル経済をはじめさまざまな分野のイノベーションは社会を変革し、とてつもない経済的機会をもたらす可能性がある。まさに世界はその入り口に立ったところで、これからの新しい時代にふさわしい新しい日米関係が構築されようとしている。
(terracePRESS編集部)