アフガニスタンから学ぶもの
イスラム主義組織タリバンがアフガニスタン全土を掌握した。今後は、支配体制の構築とともに、国民の人心掌握や国際社会の支持獲得に乗り出すことになる。アフガニスタンは日本とは民族、宗教、経済規模など全くことなる地域だが、アフガニスタンで起こったことを日本も教訓にし、日本の安全保障を確固としたものにする必要がある。
米国は、2001年9月の同時多発テロ事件を受けて同年10月にアフガニスタンに侵攻を開始。米軍はそれ以来、20年にわたり駐留してきたが、21年5月1日から軍の撤退を開始し、9月11日までに完了するとしていた。
今回のタリバンの制圧は、この米軍撤退が大きく影響したものだが、日本人が教訓とすべきことが3点ある。
1点目は、世界は決して自由や民主主義に価値を置いている民族や国だけではないということだ。日本のような島国の民主主義国で暮らしているとそれを忘れてしまうが、世界にはタリバンのようなイスラム原理主義勢力もいれば、中国のような共産主義国家もある。そうした多様性があるのが国際社会の現実だし、われわれは民主主義が普遍的価値だと思っているが、世界には別の価値観を持った民族、国家もあり、日本はそうした社会の中にあるということだ。
2点目は、軍事バランスが崩れると混乱が起こるということだ。米国はアフガニスタンに約20年軍事的なプレゼンスを発揮してきたが、それが無くなると同時に、今回の事態になった。もちろん、撤退することが米国の国益に沿うという判断があったのだろう。
そして3点目は、米国がかつてのような超大国ではなくなっているということだ。だから、国益に沿わないと判断すれば、地域の安定を崩すことがあっても撤退することになる。米国1国で世界各地の安定を図ることはもはや難しく、同盟国と連携しながら国際地域の安全保障を確保しなければならなくなっているのだろう。
そうしたことを思い起こすのが、今回のタリバンによるアフガニスタンの制圧だ。その上で日本に目を向けると、共産主義国家で全体主義国家、そして儒教を中心とした社会の中国という国がある。そして、強大な軍事力を持ち、その軍事力を年々増強している。
そして、その中国は南シナ海で国際的な批判を無視して南沙諸島を軍事拠点化しているし、改めて指摘するまでもないが、東シナ海でも日本の領土である尖閣諸島の領海への侵入を繰り返している。
日本の場合は、米国と安全保障条約を結び、米国には日本を防衛する義務がある。尖閣諸島についても日米安保の適用範囲であることを、外交当局間や首脳間で何度も確認している。その一方で、日本には米軍基地があるわけだが、それは日本の安全を確保するためのものだ。
アフガニスタンは日本から遠い国だが、起こったことは日本の教訓になることは間違いない。改めて、日本の安全保障をどう実現していくのか、国民1人1人が考えなければならない。
(terracePRESS編集部)