ウクライナ支援は日本の国際的責務
政府は、ロシアが侵略しているウクライナ支援のため、民生用ドローンや防護マスクなどを提供する。3月に実施した防弾チョッキやヘルメットなどの供与に続く第2弾。さらにウクライナへの借款供与の増額や自衛隊機による避難民支援物資の輸送なども行う方針。ウクライナへの支援強化は日本の国際的な責務であり、今後も強化することが不可欠だ。
今回の供与は「新たにウクライナ政府からの要請」(岸防衛相)を受けて実施するもので、ドローンは防衛省が研究用として購入した市販品を供与する。提供する物資・装備品は民間航空機で周辺国に運び、ウクライナに移送する方針だ。
ウクライナは民生用のドローンをロシア軍の位置の把握、軍事用ドローンを攻撃に利用しているとされる。松野官房長官は記者会見で、ドローンの利用法に関し「ウクライナ側との国際約束の中で、贈与された装備品、物品が目的外使用されないことを確認している」と述べているが、いずれにしてもウクライナに平和がもたらされるために利用されることが重要だ。
一方、岸田首相、バイデン米大統領、英国、フランスなどEU首脳、NATO事務総長は19日、ウクライナ情勢に関するテレビ会議を実施。「ウクライナにおけるロシア軍による民間人への残虐な行為は、重大な国際人道法違反」「ウクライナの政府と国民を様々な形で迅速に支えていくことが共通の責務」などの点で一致した。
この中で岸田首相は「ウクライナの経済を下支えすることが急務であり、日本は、譲許的な財政支援としての借款を、既に表明済みの1億ドルから3億ドルに増額すること」などを表明している。
首相はさらに「今回の侵略のインパクトは欧州にとどまらず、東アジアにも及んでいる」などということにも言及している。
こうしたドローン、防護マスクなど物資・装備品の供与や財政支援などのほか、政府はさらに、ロシアの侵略から逃れたウクライナの避難民を支援するため、自衛隊機による支援物資の輸送も検討している。
自衛隊に被災民救援空輸隊を編成し、航空自衛隊のC-2輸送機が、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイやインドのムンバイに備蓄する毛布などの人道支援物資を積載し、ポーランドやルーマニアへ輸送する計画で、早ければ今月下旬から実施するという。国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく活動だから、UNHCRの要請を受けて実施することになる。
日本は、防衛装備移転三原則があり、自衛隊の装備品の供与なども規制があるし、自衛隊機の派遣でも同様に厳しく規制されている。
ロシアのウクライナ侵略は第2次大戦後、世界における平和維持の最大の危機だ。こうした情勢の中でも、「平和国家」である日本には、平和維持のための協力に限界があることも事実だ。ウクライナ支援を強化することは日本の責務だが、ウクライナ情勢を契機に、世界やアジアの平和維持のために日本が担うべきことを再検討することも必要だ。
(terracePRESS編集部)