起業に挑戦する地方移住者を地域の新たな担い手に
岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実現には、デジタル田園都市国家構想を推進し、地域の課題解決をしながら地方から全国へのボトムアップ型の成長が不可欠となる。しかし、その地方は人口減少が急激に進んでおり、従来の地方住民に加え、起業に挑戦する意欲のある地方移住者が地域の新たな担い手になることが必要だ。
現在、地域経済の底上げや地域コミュニティの持続的発展のためには、活力ある中堅・中小企業の創出や、社会起業を促進することが不可欠となっている。
しかし、企業間の競争は激しくなっている上、中小企業は後継者不足にも直面、新型コロナウイルス感染症は、多くの業種の体力を奪うなど、地域経済の脆弱化は進んでいる。
一方で、コロナ禍によりテレワークやリモート化が進んだため、オンライン商談やネット販売により商圏の拡大が可能になるなど、地方でも起業を行いやすい環境ができつつある。地方移住の機運が高まっているほか、自宅やシェアオフィスを事務所とした小規模な起業や、収入よりも社会貢献や地域貢献を目指した起業が増加するという変化もみられている。
そのため、地域経済の活性化に向けて、起業に挑戦する意欲のある地方移住者が地域の新たな担い手となって、地域資源を活用したイノベーションの創出、地域コミュニティの活性化などを行うことが期待される。
内閣府が先ごろまとめた「地域の新たな担い手としての移住起業者に関する分析-実態と課題、地域活性化への影響について-」でも、アンケート調査などを実施し、移住起業者の拡大に向けた今後の政策の検討などを行っている。
分析によると、移住起業者は①テレワーク実施率が高く、デジタル環境を活かした事業を行っている②起業準備中の副業実施率が高く、副業から起業へ発展することが多い ③社会課題解決・地域貢献への意欲が高い④コワーキングスペースやシェアオフィスなど、新しい働き方に対応した現代的な事業空間を積極的に取り入れている⑤起業当初から複数の従業員がいることが多く、雇用創出効果が大きい-といった特徴があるという。
例えば、雇用創出効果をみると、移住起業者が2人以上雇用した移住起業者は71%に達したが、地方起業者の場合は38%にとどまっている。また、移住起業者は地方起業者と比較して「社会や地域に貢献したかったから」というきっかけが多い一方、「勤め先の仕事内容と自分のやりたいことのギャップがあったから」や「家庭と両立できる仕事がしたかったから」といった現在の仕事への不満をきっかけとした起業は少ないのも特徴だ。
こうした特徴をみると、地域活性化にインパクトを与える要因として移住起業者が不可欠で、地域にデジタル化を浸透させたり、若年層のUIJターン誘発により関係人口を創出させたりする波及効果も期待できるという。
分析では「デジタル環境の整備、副業の後押しなど新しい働き方の推進」「自治体による地域課題の明確化、地域の魅力の情報発信」「自治体と地域の民間団体の連携による移住起業者への伴走支援」などが必要と指摘している。
(terracePRESS編集部)